このあたりについては日本経済新聞社の大石格編集員の『安倍談話は村山談話を否定していない 「80年談話は不要」の真意』(Nikkei Views 8月13日)が非常にわかりやすく解説しているので、「反省など許せない」と怒っている人ほどお読みいただきたい。

強い憎悪で国を割る
“日本の敵”が使う常套手段

 さて、このような話を聞いていると、「歴代内閣の方針を踏襲しているだけで、しかも安倍さん同様に加害責任も言及していないのに、なんで石破首相はこんなに叩かれるの?」と不思議に思う方もいるだろう。それはシンプルに「権力闘争」のためだ。

 ご存じのように、安倍元首相が亡くなってからいわゆる「保守」の政治勢力は弱体化してしまった。先の参院選でも旧安倍派は苦戦し、2024年の自民党総裁選で高市早苗衆議院議員の推薦人として名を連ねた方たちもかなり落選してしまった。

 では、そんな保守勢力が再び輝きを取り戻すにはどうすればいいのか。昨今の世界的なトレンドを見ると、「敵をつくって有権者の怒りを煽る」が王道だ。

 外国人への不平不満を訴えて躍進した参政党やドイツのAfD(ドイツのための選択肢)、ディープステートに対する不信感で政権に返り咲いたトランプ氏などの例を出すまでもなく「強い支持」には「強い憎悪」が必要なのだ。

 ここまで言えばおわかりだろう、日本の保守勢力の復活のためには、かつての民主党政権のように「日本を貶める売国政治家」が必要。そして、それが石破首相なのだ。

 いずれにせよ、今回の朝日と毎日が火付け役の「反省復活」を真に受けて、石破首相を叩くほうが日本の国益を損ねる。

 先ほどから申し上げているように、全国戦没者追悼式という国内イベントで「反省」を口にすることなど大した問題ではない。歴代内閣の立場を踏襲しているだけで実際、中国国営メディアも「反省」というワードのある・なしなど問題視していない。

 しかし、今のように日本人があまりに大騒ぎをすれば、中国などは「日本の首相に反省を言及させること」に価値を見出しかねない。彼らからすれば、国内世論が分断して保守の首相叩きが始まる便利な政治カードが一枚増えたようなものだ。