習近平国家出席とドナルド・トランプ大統領習近平国家出席(左)とドナルド・トランプ大統領 Photo:Anadolu,Anna Moneymaker/gettyimages

2月上旬、オープンAIのサム・アルトマンCEOは、日本企業に連携強化を呼びかけた。半導体の製造や検査装置、感光材やシリコンウエハーなど、高純度部材の製造技術において、日本企業の競争力は高いからだ。一方、習近平体制下で開発に明け暮れる中国のAI企業にとって、日米企業の連携はそれなりの脅威になるはずだ。エヌビディアとトヨタ自動車が連携したように、AIで全く新しい需要を創出する成長の兆しは増えつつある。他方、トランプ大統領が米国ファーストを貫き、「関税」を武器に、同盟国に対中制裁に参画するよう強要する可能性は高いだろう。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

ディープシーク・ショックは「序の口」か

 米国と中国のAI(人工知能)の開発競争は今後一段と激化するだろう。トランプ大統領は、総額約78兆円にも上るAIインフラ整備「スターゲート計画」を発表し、「米国をAIの世界首都にする」との大統領令に署名した。

 一方、中国ではAI開発企業の競争がすさまじく、世界トップを目指す企業も急増している。そうした動向が顕在化したのが、「ディープシーク・ショック」である。ただし、ディープシークは中国のAI業界の1社にすぎない。中国では新興企業や主要大学が、習近平体制下の共産党政権の方針に従い、AI開発に積極的に取り組んでいる。

 AIは、世界の政治、経済、安全保障に重要な影響を与えるとみられる。覇権国である米国が、多国間の政策連携を仕切ってAI開発を推進すれば、世界がそのベネフィットを享受することは可能だろう。

 しかし、ここで問題なのが、トランプ大統領に国際協調のスタンスがあまりないことだ。AI分野でも、米国ファーストの姿勢を鮮明化している。

 米国がAI関連分野で対中制裁を強化すると、中国も強硬姿勢を取らざるを得なくなるだろう。AI開発のメリット、恩恵が世界に行き渡るよりも、米中AI戦争が本格化して世界経済・金融市場の不安定感が増すことになりそうだ。