2つ目がテクニカルスキル(専門スキル)です。こちらは、特定領域に特化したスキルで、例えばプログラミング、会計知識、デジタル広告運用、動画編集、語学力、法務知識などが該当します。

 これらのスキルは、短期的には求人ニーズや収入に直結しやすく、特定分野での即戦力として高く評価されます。一方で、技術革新や業界の変化により、陳腐化するスピードも速いため、学び続ける姿勢が欠かせません。

 両者は「どちらが重要か」という二項対立ではなく、バランスが肝要です。特に20代は、まずポータブルスキルをしっかりと土台として築いたうえで、必要なテクニカルスキルを適宜身につけていくことが、長期的な市場価値を高める上で効果的です。

専門職こそポータブルスキルが
不可欠であるワケ

 ポータブルスキルは営業やコンサルタントといった職種に必要なスキルと捉えられがちですが、実は専門職においても大きな価値を発揮します。

 どれだけ高度なテクニカルスキルを持っていても、それを相手に伝え、周囲と連携し、課題を発見して解決に導く力がなければ、実務で十分な成果を出すことは難しいからです。

 例えば、エンジニアであれば、仕様を正確にヒアリングし、関係者と円滑に協働する力が必要ですし、経理や財務では、非専門職にもわかりやすく説明するプレゼン力が求められます。

 また、専門職ほどチームでの連携やプロジェクト推進が求められるため、論理的思考力やマルチタスク力、プロジェクトマネジメント力といったポータブルスキルが業務の質を左右します。

 キャリアが進めば、マネジメントや後輩育成、社外折衝といった場面も増えてきます。そのときに求められるのは、「考えを構造化して伝える力」や「周囲を巻き込む力」です。

 実際に、30代前後での採用市場では、一定の実績がありながらも評価が伸び悩むケースがあります。その原因の多くは、マネジメント経験や周囲を巻き込んで成果を出す経験といった、ポータブルスキルの不足です。