明石家さんまPhoto:SANKEI

かつて大阪の街にあふれていた「ちゃいまんねん」や「ごめんやしておくれやっしゃ」といった“コテコテの大阪弁”は、今では耳にする機会がめっきり減った。一方で、「ワロタ」「自分それガチ?」のような関西弁は、SNSを通じて全国の若者に広まりつつある。全国的な関西弁の変化と、若者言葉との交差点を探る。※本稿は、金水 敏『大阪ことばの謎』(SBクリエイティブ)の一部を抜粋・編集したものです。

今や大阪人も使わない
「コテコテ大阪弁」の特徴

「コテコテ大阪弁」であるが、その特徴についてまとめておきたい。歴史的には、大正末から昭和初期(20世紀初頭)にほぼ完成し、戦後に受けつがれたが、現実の話者の間ではしだいに用いられなくなって今日にいたっている。私自身、ふざけて使う以外は使用したことがないし、大学で教えているときに学生が使うのも聞いたことがない。

 さてその文法的特徴は、「わい」「わて」「わし」「あんさん」「おまはん」等の人称代名詞のほかは、敬語(丁寧語・尊敬語等)の形によく現れる。

・マス・デス・ダス系(丁寧形)
 ちゃいまんがな   そうでんがな   そうだんがな
 ちゃいまんねん   そうでんねん   そうだんねん
 ちゃいまっせ    そうでっせ    そうだっせ
 ちゃいまっか    そうでっか    そうだっか
 ちゃいまっしゃろ  そうでっしゃろ  そうだっしゃろ

・ヤス系(尊敬+丁寧形)
 ごめんやす  ごめんやっしゃ
 おいでやす  おいでやっしゃ
 おこしやす  おこしやっしゃ

・ナハル系
 ようきなはった
 やめなはれ
 やめなはらんかい

・オマス系
 おます  おまっか  おまっせ  おまんねん

 このように、大阪弁では敬語のヴァリエーションが大変発達したが、これは大阪が商売の町として独自の言語表現を発達させたことと関連が深い。同じ大阪でも、泉州弁(編集部注/大阪府南西部の泉州地域で話される方言)ではほとんど敬語が発達しなかったことと考え合わせるとよい。