コテコテ大阪弁は標準語に
置き換えても意味は変わらない

 これらの表現は現在どうなったかというと、「ちゃいまんねん→ちゃうんです」「そうだっか→そうですか」「ごめんやす→ごめんください」「やめなはれ→やめなさい」等のように、標準語形に置き換えられた。固有の敬語として生き残っているのは、「なはる」から変化したと言われるハル敬語くらいである。

 なぜこれらの表現が失われたかというと、敬語というのはよそから来た人とのコミュニケーションに用いられるので、どうしても標準語形にひっぱられやすいという性質があるのである。

 しかしながら、これらの表現はマスメディアを通じて全国に広まったので、関西の外の人から見ると典型的な大阪弁(関西弁)の表現として未だに認識されている。そのことを利用して、明石家さんまや笑福亭鶴光、笑福亭鶴瓶のような全国区で活躍するタレントは、わざとコテコテ大阪弁的な表現を現代でも用いてウケを取っている。

 1980年代にテレビで一世を風靡した「オレたちひょうきん族」で、明石家さんまは「パーデンネン」というキャラクターに扮し、「アホちゃいまんねん、パーでんねん」というフレーズで大当たりした。

 なお、京都では「おす」「どす」という敬語表現があり、「京風はんなりどっせ」などと言ったりするが、これも舞妓さんや土産物屋さんが使うくらいで、若い人々の間では死語となっている。滅びた理由は大阪弁と同じで、標準語形に駆逐されたのである。

自称と対称の両方に
使われる「自分」

 関西弁でよく用いられる自称詞としては、「ぼく(男)」「おれ(男)」「うち(女)」「自分(男中心)」「△わし(男)」「*わい(男)」「*わて(男女)」「*わたい(男女)」「*あて(女)」等がある。

 括弧内は主たる使用者の性別で、*を付したのは、リアルな話者が口にすることがほとんどなくなったもので、△を付した「わし」は60代以上の高齢者に限り用いられるものである。