また対称詞としては、「あなた(男女)」「あんた(男女)」「きみ(男中心)」「おまえ(男)」「おたく(男女)」「自分(男女)」「われ(男)」「*おまはん(男女)」「*あんさん(男女)」等がある。

 ここで、自称と対称の両方に出てくる、「自分」に着目したい。自称詞の「自分」はいわゆる「反照代名詞」の一種であるが、反照代名詞と自称詞は古来、通じ合う面を持っていた。反照代名詞とは、文の主語が指し示す対象と同じものを指し示す代名詞の一種で、英語で言えば「myself」「yourself」のような、いわゆるself代名詞に当たるものである。

 例えば「我と我が身」の「我」は反照代名詞的な用法である。「自分」は旧帝国陸軍で兵卒が上官に対して話すとき、「私」とか「僕」ではなく「自分」を使うことを求められたことがよく知られている。

 この場合、上官の前でかしこまって自分自身を指し示すのに用いられる訳であるが、関西弁の自称詞の自分も、目上から同等ぐらいの相手に対して用いるのが普通である。関西外でも、たとえば首都圏では一般の若い男性に使用者が広がっているようである。

 対称詞の「自分」は、『辞典〈新しい日本語〉』(講談社 2004年)によると、「関西で中年以下に多い」「東海道沿線の各地にも散在」「西日本各地に散在、新潟付近や首都圏にも散在」「山梨県では古くからからジブンを第二人称に使っていたという」と記載されている。

対称詞の「自分」は
目上の人には使わない

 また『大阪のことば地図』(和泉書院 1993年)によれば、インフォーマルに相手を指し示す際に用いるとして、阪南市に一例用例が挙げられていた。若い人中心に使用が見られ、またインフォーマルな会話での使用が中心、かつ大阪でも地理的な制限はあるようである。

 大阪では、目上の相手に用いられることはないと考えていいだろう。大阪弁話者の語感としては、相手の心中にずかずかと踏み込んでくる印象がある。タレントでは、笑福亭鶴瓶師匠がよく用いると、タレントの島崎和歌子氏が証言している(石毛直道ほか『勝手に関西世界遺産』より引用)。