弱点すら魅力に変える
現代リーダーシップのヒント
最強の武将と謳われた謙信が、唯一勝てなかったのが酒の誘惑だったという逸話。しかし、この人間味あふれる一面こそ、現代のビジネスリーダーが学ぶべき要諦が隠されています。
完璧ではないからこそ生まれる、強固な組織づくりのヒントがそこにはあるのです。
「かちどき飯」に学ぶ、集中投資の極意
普段は「一汁一菜」で徹底したコスト管理を行いながら、勝負どころである出陣前には「かちどき飯」で兵の士気を最大限に高める。この謙信の采配は、経営資源の選択と集中そのものです。
日常業務では無駄を省き、ここぞという新規プロジェクトや人材育成には大胆に投資する。この緩急自在の判断こそが、組織の持続的な成長を支える鍵となるでしょう。
「義」が人を動かす、パーパス経営の原点
謙信は私利私欲のためではなく、秩序回復という「義」のために戦いました。これは、現代経営で注目される「パーパス(企業の存在意義)」に通じます。
目先の利益だけを追求する組織は、困難な局面で脆さを見せます。しかし、社会的な意義や明確な理念を掲げる企業には、従業員のエンゲージメントを高め、顧客やパートナーからの強い信頼を得て、逆境を乗り越える力が宿るのです。
弱さの開示が、心理的安全性を生む
毘沙門天の化身と称されるほどのストイックさを持ちながら、大の酒好きという弱点があったからこそ、部下たちは謙信に人間的な魅力を感じ、心から信奉したのではないでしょうか。
現代のリーダーも、自身の弱さや失敗を適切に開示することで、部下との心理的な壁を取り払い、「この人のためなら」と思わせる求心力を生み出します。
完璧な指導者を目指すより、弱さすらも強みに変える人間的魅力が、変化の激しい時代を勝ち抜くチームを築き上げるのです。
※本稿は『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。