
AIが進化したことで、「文章作成はChatGPTに任せるべき」という声が大きくなってきた。実際、ビジネスやアカデミアの現場では、AIによる文章の自動生成が当たり前になっている。そんな時代に、わざわざ人間が文章を書く意味はあるのか?AI時代のこの大きな問いに、言語学者が答えを提示する。※本稿は、石黒 圭『読み手に届く文章技術』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。
「言葉を使えるのは人間だけ」
そんな常識をAIが壊した
ChatGPTが2023年初頭から世界中に一気に広がったのをきっかけに、テキスト生成AIに文章を書かせるという方法が、現代の有力な選択肢の1つになっています。
読者のなかには、ChatGPTやGemini、Claudeをはじめとするテキスト生成AIを使って文章を書くのが当たり前になっている方もいらっしゃる一方、そうしたテキスト生成AIに触ったことがまったくない方までいらっしゃることでしょう。
私自身はこれまで約50冊に及ぶ著書を自分の頭と手で書いてきていますし、そのやり方に誇りを持っています。今後、部分的にテキスト生成AIの力を借りることはあっても、ベースとなる部分ではおそらく死ぬまでそのやり方を変えないと思います。
しかし、時代が変わってきているのは事実です。読者のなかでもとくに若い方の場合、書く効率の悪い手書きという方法しか選択できないと、厳しい労働市場のなかで淘汰されてしまうおそれがあります。
また、そもそもテキスト生成AIの助けを借りたほうが、業務の量をこなす効率がよくなるだけでなく、業務の質までも高くなるのであれば、意地を張らずに使えるものは使ったほうがよいという考え方もありうるでしょう。