
故郷から遠く離れた街で暮らす人にとっては悩みの種のひとつでもある、田舎のお墓の手入れ。頭を悩ませているのはドイツ人も例外ではないが、そこには日本とは違った独特のルールがあるのだとか。日本とのお墓文化の違いを、日独にルーツをもつエッセイストが解説する。※本稿は、サンドラ・ヘフェリン『ドイツ人は飾らず・悩まず・さらりと老いる』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。
お墓があると
罪悪感のもとになる?
少子化と都市化が進む日本では、「誰がお墓を受け継ぐか?」が問題になっています。
地方出身者が都会に出て家庭をもつと、「そんなに頻繁に帰省はできないし、地元にあるお墓の手入れをするのは難しい」という話もよく聞きます。
「お墓をどうする問題」は、もちろんドイツにもあります。
「知り合いの高齢者が、『自分が死んだら墓は作らずに遺灰を海に撒いてほしい』と言っていたの。話を聞いて『ロマンチックだな』と思ったけど、本当の理由は、お墓を作っても息子がお参りに来ないことがわかっていたからなのよ。自分が今いる施設にも会いに来ないんだからお墓に来るわけがないってね」
こう語るのは、40代のドイツ人女性です。
飛行機事故で父を亡くしたユリアさんも、「普通のお墓」には否定的です。