ただし聖書には、「埋葬はこうしなければいけない」と明確に書かれてはいません。特に様々な改革を行うプロテスタント教会は、1920年代には火葬を認めています。現在は、カトリックでもよほど厳格な教徒でない限り、火葬も珍しくありません。
葬儀の相談を請け負うノヴェンバー(Everlife社)によると、2023年現在、ドイツで火葬を希望する人は約60%、土葬を希望する人は30~40%。北海やバルト海への「海葬」は5~10%、そして森林葬の希望が14%だといいます。
ドイツは北のほうに少し海があるだけの国です。だからこそ海に憧れがあり、休暇のたびに多くの人が「海とビーチのある南の島に遠出する」のもそのためでしょう。「海葬」を希望する人が1割ほどいるというのはなかなか興味深い話だと思います。
ドイツのお墓は
「持ち家」ではなく「賃貸」?
お墓には「スペースが必要」という問題もあります。
難民や移民が多いドイツにはトルコ系住民が約300万人おり、その多くがイスラム教徒です。他にもシリア人やアフガニスタン人など「ドイツで暮らすイスラム教徒が多い」ため、自然な流れでイスラム教徒用の墓地が作られています。
日本でも今後、インドネシアなどイスラム教の国から労働者が多く来ると予想されていますが、彼らが「日本に住む」だけでなく「日本で死ぬ」時のことも考えなければいけません。日本でもイスラム教徒用の墓地の新設について真剣に考える時が来るのではないかと、私は考えています。
私の友人、タニアさんの父方の祖母エーデルガルト・カウフ(Edelgard Kauf)さんは、ベルリンの壁の崩壊後、1990年から94年までビッターフェルト(Bitterfeld)の市長をしていました。96年に52歳の若さで亡くなり、当時9歳だったタニアさんもお葬式に参列しています。
ドイツのお墓は一部「賃貸」形式です。つまりお墓を「何年から何年まで借りる」という契約(Ruhefrist)の形を取っており、多くは「20年契約」です。祖母の契約が切れそうになった時、墓の管理者から、「契約を延長するか」について、連絡があったそうです。家族は迷いましたが、祖母は公人でした。