「母方の家族のお墓はベルリンにあるの。私が小さかった頃、母はお墓参りに行くたびに自分を責めていた。雑草だらけで手入れもされていない、申し訳ないって。だけど、仕事があって小さい子どもが3人もいたら、しょっちゅうお墓参りできないのは仕方ないよね?だから私はお墓はいらない。残された人が罪悪感をもって、そのうち負担になるのは避けたいもの。父の遺灰は海に撒いたけど、私は自宅近くの山に遺灰を撒いてもらいたいな」
こうした話を聞くと「海への散骨」というのは、なかなか合理的というか現実的かもしれません。
お墓の相談ができるのは
「悲しむ権利がある者」
ミュンヘン在住の60代のドイツ人女性は、父親を亡くした時に母親の介護の最中で、お墓についてゆっくりと考える時間がありませんでした。
ドイツの法律では、骨壺や遺骨を自宅に保管することが禁じられています。お隣のスイスでは日本と同じように、「遺骨をしばらく家のリビングに置いて故人を偲ぶ」ことは可能ですが、ドイツだと違法になってしまうのです。
そこで彼女は「とりあえずあいていた墓地」に父親を埋葬しましたが、数年経ってから、もっといい場所へと、「お墓の引っ越し」(Urnenumbettung)をしました。お墓に関しては、配偶者や子どもなど、故人の家族(Trauerberechtigte)全員の同意を得なければなりません。“Trauerberechtigte”を直訳すると「悲しむ権利がある者」というのが面白いところです。
ドイツのお墓に関しては「土葬ならでは」のエピソードもあります。女性は、母親が亡くなった3年後にお兄さんを亡くしています。2人とも土葬で同じお墓に入りました。
現実的な話をすると、基本的には「前の人を埋葬してから5~6年ほど間があいていれば」、そして「故人が特に大柄でなければ」、土葬でも1つのお墓に、問題なく3人ぐらい入れます。
ところが、女性の母親も兄も、かなりの大柄だったのです。