その理由は、野生の鹿と厳島神社の両方を一度に見学できたことにあります。海の上にそびえる厳島神社の大鳥居は絶景でしたし、さらに幸運なことに、偶然、私たちは神主と巫女がご祈祷をしているところに遭遇することができました。

 それはアニメーションでも見たことのなかった光景でした。おかげで日本の神社の歴史や伝統をより深く体験することができました。

宮島の鹿に出会って
感じたアメリカとの違い

 ところで、日本の鹿はハーバードビジネススクールの学生の間で人気を集めていますが(注:毎年、参加者は全員、宮島を訪問。オプショナルツアーで奈良を訪問する学生もいる)、なぜこんなに私たちが鹿にハマるのかといえば、日本の鹿があまりにもキュートで礼儀正しいからです!

 至近距離で見たり、一緒に写真を撮ったりすることもできるなんて信じられません。アメリカでは、馬に乗ったり、「ふれあい動物園」に行ったりすることはできますが、野生の鹿と触れ合えるのは日本だけです。

 宮島に到着するやいなや、まず驚いたのが、鹿が私のほうにてくてくと近づいてきたこと。しかも私の目をみて、お辞儀をするではありませんか!

宮島宮島の鹿と一緒に=2025年5月26日、広島県廿日市市 写真提供:オースティン・レガラド

 アメリカで鹿といえば、スポーツハンティングの対象となる動物。人間を見たら、本能的に逃げていくのが普通です。宮島の鹿が人間に親しげに寄ってきたのには、本当にびっくりしました。

 ツアーガイドから、宮島の鹿は「神の使い」として敬われ、1000年以上にわたって人間と共存してきたと聞き、この鹿そのものが、日本の歴史を象徴しているのかと思うと、さらに特別な体験をしているような感覚になりました。

 とはいうものの、フレンドリーすぎる鹿がいたのは、ちょっと困惑してしまいました。何匹もの鹿に囲まれたときは、さすがに「鹿さん、鹿さん、もう少し後ろに下がってください」と思いましたよ。