組織を壊す「自分ファースト」な社員たち 木村政美写真はイメージです Photo:PIXTA

2年前に辞めた社員が戻ってくることになった。「仕事ができる、優秀だ」と聞いていた人事部長は、期待を込めて彼が元々働いていた部署に出戻らせることに。しかし実際に働き出してみるとなぜかトラブルが起きてしまう……。これは「どうしてこんなことに」なのか、それとも「やっぱりこうなった」なのか。そして、退職した社員をカムバック採用する場合、注意すべきポイントとは?(社会保険労務士 木村政美)

<甲社概要>
都内でおもに精密機器の製造販売を営む。従業員数は300名。
<登場人物>
A:大学卒業後甲社の商品管理課に在籍していたが、2年前に退職。乙社に転職後、再び甲社に戻ってきた。30歳。
B:人事・総務部長で採用・労務管理の責任者。50歳。
C:商品管理課長でAとDの上司。40歳。
D:Aの1歳下の後輩で商品管理課主任。29歳。
E:甲社の顧問社労士。

数年前に働いていた会社の、同じ部署に出戻ってきた

 甲社の商品管理課(メンバー数20名)は、商品の発注や仕入れ、品質管理、販売データを基に市場動向の分析をする部署で、退職前のAは主任として実務に当たっていた。当時の上司はAの仕事ぶりを認めてくれたが、他のメンバーたちとはソリが合わず、2年前、キャリアアップの目的で食品会社の乙社に転職した。

 しかし入社してみると、求人内容とは話が違っていた。甲社よりも残業時間が多い上に年収は50万円も下がるし、商品管理システムの改良を任されたのに、管理職メンバーは全員が社長の同族で、自分の意見が全く通らない。キャリアアップが見込めないことに落胆したAは、B部長に連絡を取り、再び甲社で働きたいと懇願した。在職時から仕事ができるAを買っていたB部長は、商品管理課の人手不足を理由にAの希望を即座に受け入れ、元の部署で再び勤務ができるように計らった。

 6月上旬の朝。Aは商品管理課の朝礼でC課長から紹介されると、「またここでよろしくお願いします」とにこやかにあいさつをし、メンバーたちから大きな拍手を受けた。Aの退職後、C課長を始め部署のメンバーのほとんどは入れ替わっており、皆はベテランとして仕事ができるAに期待していた。しかしD主任だけは表情が暗かった。

「あの頃と同じことになるかも……」

 Aは仕事の腕は確かだが、他のメンバーにも同じ水準を求める厳しさがある。強引に自分のやり方を押し通すので、徐々に職場の雰囲気が悪化していった。D主任は長い間Aと一緒に仕事をしていたので、そのことをよく知っていたのだ。