今IT業界では、職場における「人間性の喪失」(dehumanization)が問題になっていて、「自分はまるで機械の部品のようだ」と感じ、やる気を失ってしまう人が後をたちません。

 例えば、インドにいる20人のスタッフに業務を委託していたとしましょう。ビデオ会議の画面にずらっと並んだ20人を相手に仕事を続けていると、一人一人が個性をもった人間であることをついつい忘れがちになってしまうのです。

 私自身、このような仕事の仕方が、本当に会社全体の業績を向上させることにつながっているのか、ずっと疑問に思っていました。人間性を大切にしながら、効率も業績も向上させる方法があるのではないかと、模索していたのです。

 そんな中、ハーバードビジネススクールの授業で、テッセイとトヨタが人間性を尊重したマネジメントを実現し、その結果として優れた業績をあげていることを知りました。

 この2社のマネジメントに共通していたのが「人間へのリスペクト」。経営者は従業員を大切にし、現場の意見を尊重し、従業員はどんどん改善案を出し、やる気をもって仕事をする。これこそが、自分が目指すべき経営だと思いました。

ハーバードの知性広島・安芸グランドホテルにて(後列右がオースティン・レガラドさん)=2025年5月25日、広島県廿日市市 写真提供:「ジャパン・トレック」幹事団

これからの人生に生かしたい
日本から学んだ3つのこと

 卒業後は、大手コンサルティング会社に就職する予定です。長期的には経営者、あるいは、起業家になることを目指しています。それとは平行して、自分のルーツであるラテンアメリカ人コミュニティーに貢献する仕事もしていきたいと考えています。

 今後、キャリアを築いていく上で生かしていきたい日本からの学びが3つあります。

 1つめは、トヨタ自動車の事例から学習したカイゼンの思想。私はこれを仕事だけではなく、自分の生き方にも応用していくつもりです。変化が激しい世界でリーダーとして活躍するには、現状に甘んじることなく、常に自分をカイゼン=自己刷新していく必要があると感じているからです。