また、この行動は、観察者が子どもと同じ集団に属している場合に、特に強く現れることがわかりました。子どもは自分の評判を意識し、なかでも内集団からの評判を気にして行動を調整しているようです。
子供の行動を変える
「見えない存在」の効果
子どもは、他者に見られているときに良い行動をとる傾向があることを紹介しました。では、この行動調整は、実際に他者が観察している場合のみに起こるのでしょうか。
たとえば、「神様が見ている」「閻魔様は良い行いをした者を天国に送り、悪い行いをした者を地獄に送る」などの話を、子どもはよく耳にします。ここで登場する「神様」や「閻魔様」は目には見えない存在です。
こうした、見えない存在を意識することで、子どもの行動が変わることがあります。我が家でも、クリスマスシーズンにサンタクロースの存在をほのめかすと、子どもが頻繁に行動を調整する様子がみられます。
実際、研究においても、目に見えない存在を意識することで道徳行動が促されることが報告されています。たとえば、大人を対象とした実験では、「幽霊が同じ部屋にいる」と聞かされた大学生は、そうでない大学生に比べて、カンニングが減ることが示されています。
「アリスが見てるよ」だけで
子どもがルールを守る?
子どもを対象にした実験でも、目に見えない超自然的な存在を教えることで、子どもの行動が変わることが示されています(注4)。この実験では、5~9歳の子どもに、得点に応じて報酬がもらえるボール投げゲームを実施しました。以下の3つの条件で、行動が比較されました。
(1)目に見えない存在であるプリンセス・アリスが見ていると教えられる場合、(2)実際に大人が見ている場合、(3)誰にも見られていない場合。ちなみに、プリンセス・アリスとは姿を消す能力を持つ魔法のプリンセスであり、目には見えないけれど、部屋の隅の椅子に座っていると説明されました。