セクハラの場合は、職場は仕事をするところで性的な言動自体がないというのが前提なので、そういった言動があった時点で多くの人がセクハラだと受け止めます。それゆえ、「被害者が嫌と感じればセクハラ」という考え方になっています。

 一方、パワハラは、注意や指導との違いがあいまいなので、「本人が嫌だと感じたらすべてがパワハラ」では、仕事になりません。常識的な感じ方に照らし合わせて「業務上必要かつ相当な範囲」かどうかが、判断の分かれ目になるということです。

対応法

 松本さんのケースのように、部署のメンバーが若手社員に入れ替わったことで、それまでの体育会系のノリが受け入れられなくなったというのはよくあることです。ここ数年で、大手芸能事務所やテレビ局、有名企業などの事件が社会問題として大きく取り上げられていることも、ハラスメントに対する考え方が厳しくなった原因ともいえます。

 それでも、上司という立場にあれば、言いづらいことも言わなくてはいけないことがありますし、ときには懇親会のようなコミュニケーションの場が必要になることもあるでしょう。どこに地雷があるか分からないからといって、必要な指摘や提案をしないのは、管理職としての責務を果たせていないことになります。

 では、どうしたら良いのでしょうか。

 ハラスメント研修は管理職だけでなく、全社員を対象に実施すべきです。筆者はハラスメント研修の依頼を受ける機会が多いですが、その多くは管理職だけを対象としています。部下から上司に対するパワハラも増えているので、すべての職位に対して研修を実施していくことが必要だと考えます。

 個々の社員としては、ハラスメントの知識を厚生労働省のホームページなどできちんと調べて理解することが重要です。とくに管理職は、常に正しい情報を把握して、自分自身と部下を守る必要があります。飲み会や会議の頻度については、他の部署を参考にする、部下の感じ方についてヒアリングをする、人事などに相談するという方法も考えられます。

 セクハラ、マタハラ、育介ハラ、パワハラに関しては、それぞれの法律で「防止措置」をとることが義務付けられています。必要な措置を講じなかった場合は、コンプライアンスの問題が発生し、労働局から指導などを受けることになりかねません。今、多くの管理職がハラスメントについて悩んでいます。根本的に解決するには、組織がハラスメント対策に真剣に向き合うことが不可欠だといえるでしょう。