このシステムを導入したのは誰?使いづらくてしょうがないよ!
D主任の不安は的中した。Aは復帰直後からリーダーシップを発揮しようと意気込み、細かいところまで、ああでもない、こうでもないと、D主任や他のメンバーに細かく口を出し、厳しく注意した。皆は面食らい、やがて「やっかいな人が入ってきたなあ」と陰口を言うようになった。
Aが特に違和感を抱いたのは、部署で導入されたばかりの新しい業務管理システムだった。そのシステムは、Aが退職した直後に導入されたもので、ペーパーレス化とプロセスの可視化を重視した運用だった。しかしAは、かつて自分が構築したエクセル中心での運用の方が絶対に使い勝手が良いと信じていたのだ。
「このシステムを導入したのは誰?」と、Aはフロア中に響き渡る声を上げた。
「私が中心になって進めましたが……」。Aの横にいたD主任が、小さな声で応答した。
「Dさんは、現場の流れを把握した上でこのシステムを導入したの?ちょっと使ってみたけど、使いづらくてしょうがないよ。前のやり方に戻した方がいい」
「でも、ペーパーレス化が進んだ分、効率も上がったので、メンバーや他部署からの評判も上々です。Aさんも慣れてくれば大丈夫ですよ」
「はあっ?俺の後輩のくせに、主任になったからって生意気な口をきくなよ」
2人の会話を聞いていたC課長が割って入った。
「この制度の導入は、最終的に私や会社がOKして決めたものです。ですから部署の意図を汲み取ってもらえませんか?」
「そんなの分かってますって!」
C課長に諭されたAは、しぶしぶ自席に戻った。D主任は大きなため息をついた。
「いよいよ本格的なモンスターの発動だ。俺はあの人より後輩だし、業務指導なんかとてもできない。どうしよう……」
自分の意見を拒否されたことに腹を立てたAは、その後D主任への業務報告や他のメンバーたちへの取次連絡を怠るようになり、メンバーたちも徐々にAとのコミュニケーションを避けるようになっていった。