カムバック社員がトラブルを起こしたら、どう対処する?
「前任の課長から『Aはやることが早いしミスもほとんどしない。仕事がよくできるヤツだ』とよく聞かされていました。彼はA君を可愛がっていたのでね……」
「Aさんの場合、B部長が彼の申し出を即決でOKしたのが問題です。前任課長の言葉だけで判断せずに、一度面接をして上記事項がクリアできるかを確認することが必要だったと思います。また、公平性を保つためにもカムバック採用の基準を設け、規程に明記しておくことが大切です」
「カムバック採用の件はわかりました。ところで、これからA君のことはどうすればいいですか?ここがいちばんの悩みなんです」
(1)A本人、C課長、メンバーたちなどから事情を聞き取り、現状を把握する。
(2)お互いの意思の疎通を図るために、Aと他のメンバー間とのミーティングの場を設ける。
(3)(1)の結果、C課長、D主任の指導や指示に正当性があるにもかかわらず、Aが聞き入れない場合は、上司の指示に従うよう厳重注意する。B部長より『注意を守らない場合は、就業規則による懲戒処分(けん責など)を下すことも辞さない』旨を事前に伝えておく。この説明を加えることで、態度を改める可能性は高くなる。
(4)(2)(3)を複数回行ったにもかかわらず、言動が改善されない場合は、Aの配置転換、懲戒処分を検討する。
B部長は翌日から1週間かけて、商品管理課のメンバー全員と個人面談を行なった。その結果、Aが以前在職時に行っていた業務方法を一方的に皆に押し付けていたこと、皆が聞き入れないことに腹を立て、上司への報告や指示に対する無視、他のメンバーへの取次連絡をしなかったことが明らかになった。
Aに確認したところ行為を認めたので、E社労士から得た助言通りの説明<対処例(3)>を行った。上司の指示に従わない場合は、懲戒処分も辞さないと伝えたのだ。Aはしぶしぶ了承し、その後はD主任にシステム稼働の方法を教わりながら業務をこなした。職場は本来の平穏さを取り戻したのだが……。
Aの件は解決したのでは?
9月上旬の朝。B部長の机上にAの退職届が置かれていた。あわててC課長をつかまえ、退職届を見せると、「これはどういうことだ!A君の件は解決したんじゃないのか」と尋ねた。しかしC課長は冷静に答えた。
「いいえ。確かに大人しく私の指示通りにしてましたけど、心の中は不満でいっぱいだったみたいです。部長から注意を受けた1週間後には『こんなこともうやってらんない』ってブチ切れてましたよ。だから私は彼の退職を引き留めませんでした」
隣にいたD主任もうなずいた。2人のようすを見たB部長は、ガックリと肩を落とした。