自己肯定感が低いとかなんとか言いながら、努力もしないで「理想の自分」と「現状」のギャップに苦しんでいる人も多い。だったら理想を下げればいいじゃんって思うんです。

 要するに、頑張らないなら、それに見合った現実を受け入れればいい。逆に、頑張っているなら、もっと欲張ればいいのにと思う。だから、会社をすぐ辞めること自体は悪くないけど、その後に何をするのかが大事。そこをはっきりさせないと、ただの「逃げ」になってしまう。

まだ働いたこともないのにワークライフバランス?

――最近は、いわゆるブラック企業はもちろん非難される一方で、「ホワイト職場」も避けられる傾向があるようです。

 ホワイト職場だと快適過ぎて、「ここにいたら自分は成長できないんじゃないか」っていう不安を抱く若者が増えているんでしょうね。「成長プレッシャー」みたいなのが社会全体にあって、「もっと成長しなきゃ」って焦っている人が多いのかもしれない。

 けれど、「そもそもあなたはどう成長したいの?本当に成長したいと思っているの?」というところが大事ですよね。何を求めるか次第だと思う。

 実は昨日、都内の某有名大学で講演をする機会があって、学生たちと話したんです。その時も、「稼げるブラックより、稼げなくてもホワイトがいい」って言っている学生が結構いて驚きました。「稼げなくてもいいんだ!?」って。彼らの実家の稼ぎを想像するに、稼ぐために頑張らないと今の生活の質は維持できないと思うんですけどね……。それに、まだ働いた経験もないうちからワークライフバランスを強調するのってどうかなあって思っちゃいましたね。

 もちろん、「学生」とひとくくりにするのは良くなくて、通っている大学や人それぞれでかなり違うとは思いますけど。

 大事なのは、「今、自分は何を優先したいのか」を自分で決めること。快適だけど成長がない会社に勤めていて、「このままでいいのかな」と悩んでいる若手がいたら、僕は「早く動けよ」と言いますね。だって不安なんでしょ?だったらすぐにでも動いた方がいい。

 でも逆に、「今は成長よりも安定が必要」というフェーズだってある。例えば「今は彼女を作りたいから、仕事はほどほどでいい」とか、「子育てに専念したいから3~4年は安定した職場にいよう」とか。何を得たいのか決まっていれば問題ない。自分の選択に対して「文句を言わない」ことが大切ですけどね。

 僕自身は、走っていないと怖いタイプです。止まっていると怖い。『なぜ日本人は留学しないのか?岸谷蘭丸が中受で早稲田→「このままバカに…」と怖くなったワケ』でもお伝えした通り、成長が止まるぐらいなら環境を変えたい。

 けど僕と違って、止まっていても怖くない人もいる。それなら止まっていればいい。人生にはいろんなフェーズがあっていいと思います。

ホワイト職場だと快適過ぎて成長できない?→岸谷蘭丸のアドバイスが胸にぶっ刺さった岸谷蘭丸(きしたに・らんまる) 実業家・インフルエンサー。2001年7月7日生まれ、東京都出身。幼い頃に小児リウマチを発症しながらも治療を経て回復。中学受験を経て入学した早稲田実業学校中等部卒業後、渡米してニューヨークの高校へ進学。1年で単位を修了してプリンストンの高校に編入。大学受験では米・フォーダム大学に合格するも、浪人をすることを決意。翌年イタリア・ボッコーニ大学に進学。2021年に「柚木蘭丸」としてSNS活動を開始し、2024年に俳優・岸谷五朗、ミュージシャン・岸谷香の長男であることを公表。本名での活動に切り替え、TBS『Nスタ』や『ABEMA Prime』などでコメンテーターを務める。2023年には友人とともに海外大学受験支援サービス「MMBH留学」を設立し、英語指導や出願支援を展開、教育事業にも注力している。 Photo by Shogo Murakami