「シャツ」と「スカート」
も実は同じ語源!

 2つの「グラマー」の他にも、意外な単語同士が語源で繋がっているという例は枚挙に暇がない。「シャツ」と「スカート」も実は同語源だ。英語のshirtは中世前期の古英語 scyrte(「短い衣服」の意)を語源として、さらに遡ればゲルマン語skurt(「短い」)に行き着く。一方skirtは、同じゲルマン語がノルド語(北欧語)経由で中世後期に英語に借用されたもので、こちらは下半身に穿く女性用の「短い衣服」であった。

 ついでながら、ski、skill、skin、skip、skyなど、sk~で始まる単語にはノルド語由来のものが多い。そういうわけで、shirtとskirtが同語源で、いずれも「短い」衣服ということは、勘の鋭い読者諸賢ならもうお気づきのことと思うが、「短い」すなわちshortも同じ語源だ。シャツもスカートも「布を<短く>切ったもの」なのだから、「ロングTシャツ」とか「ロングスカート」というのは、実はとてもおかしなことを言っているのである。さらに言えばshear(「刈る」「剪定する」)も同じ語源で、やはり「短く」切ることに関係がある。

 このように、shirtとskirtのような元は同じだった単語が、異なる経緯で2度借用された例を「二重語」(doublets)と言う――shortとshearも含めれば「四重語」(quadruplets)だ。例えばditch(溝)とdyke(堤防)も二重語で、前者はゲルマン語からアングロ=サクソン語に、後者はノルド語経由でアングロ=サクソン語に借用された。

二重にも四重にも
借用された単語は他にも……

 地面を掘った「溝」と盛土を施した「堤防」という、一見正反対の単語同士が同語源というのも妙な話だが、dykeは「溝を掘って生じた土を盛った堤」が原義らしい。「慣習」customと「衣装」costumeも二重語で、「習慣」「風習」を意味する古フランス語coustumeに由来する。前者は12世紀末に、後者は18世紀初頭に英語に借用された。

「衣装」がなぜ「慣習」と同語源なのかと言えば、costumeは「慣習に従った服装」だからである。同様に「習慣」を意味するhabitと、「特定の職業・場面に相応しい服装」という意味のhabilimentも同語源だ。なおcustomとhabitはどう違うのかと言うと、前者は社会的な習慣すなわち慣習、後者は個人的な習慣あるいは癖ということである。

「歴史」historyと「物語」storyは、いずれもギリシア語historia(「知識」、特に「過去を知ることで得た知識」)を借用したもので、英語に借用されたhistoryの原義は「物語」であった――確認されている最古の用例は14世紀末、ジョン・ガウアーの『恋する男の告解』(1390)である。