
英国最古の大学街であるオクスフォード。この街は、『不思議の国のアリス』のルイス・キャロルや、詩人のパーシー・ビッシュ・シェリー、『ナルニア国物語』のC・S・ルイスなど、数多の優れた文学者を輩出してきた。その一部を紹介しよう。※本稿は、安藤 聡『英文学者がつぶやく 人生を豊かにするかもしれない英語と英国文化の話』(平凡社)の一部を抜粋・編集したものです。
数多の文学者を輩出してきた
オクスフォードの街
オクスフォードは英国最古の大学街で、ロンドンからテムズ川をおよそ90キロ遡上したところに位置する。このあたりは昔から「牛」(ox)が歩いて渡れるほどの「浅瀬」(ford)だったから「オクスフォード」(古くは複数形でOxenford)と呼ばれるようになった。なお、ご存知の方も多いことと思うが、オクスフォードの街のどこを探しても「オクスフォード大学(University of Oxford)」の校舎は見当たらない。オクスフォード大学とは、街の内外に点在する30数箇所のコレッジ(College:学寮)の総称なのである。
最古のコレッジは創立700年を優に超え、各コレッジはこれまで数多の優れた詩人・小説家・劇作家・批評家などを輩出して来た。そのすべてをここで取り上げるのはもちろん不可能であり、ここに紹介するのはごく一部に過ぎない。
20世紀最大の小説家の1人グレアム・グリーン(1904~91)はエッセイ『内なるオクスフォード』で、この街の中心街の地図を「診察台に手足を広げて固定された人間」に喩えている。