例えば、誰かがSNSで「過去問を40年分やったら受かりました」とか、上位校合格者が「最後は計算問題だけやりました」と言っていたとしても、過去問だけで実力がつくほど受験は甘くありませんし、計算問題だけといっても、それは誇張して切り取られた一部であり、全てではないはずです。

 このような情報は、どうしても話にインパクトを持たせるためにエッジを効かせ、デフォルメされて伝えられがちです。そうした実態をを理解せず鵜呑みにすると、取り返しのつかない状況に陥る危険性があります。

 兄や姉の成功例をそのまま下の子に適用しようとしたり、保護者自身の30年前の受験経験を参考にしすぎるのも非常に危険です。

 父母や兄姉と本人は、当然ながら皆それぞれ異なる個性を持っており、同じことを同じようにして同じ結果が出るはずもありません。個性だけでなく、そのときの時代、受験倍率などの環境も違います。この違いを理解し、調整できなければ、受験を成功に導くことは困難になります。

 重要なのは、目の前の子どもの実情に合わせた適切な指導を受けることです。各塾の先生に具体的に相談し、その子にとっての最短経路を見つけることが不可欠です。

 二学期以降は塾の先生を信頼し
アドバイスをもらって勉強計画を立てる

 二学期以降に重要なのは、通っている塾の先生を信頼し、相談しながら学習を進めることです。私が塾の経営者だから、「ポジショントーク」だと思われるかもしれません。しかし、無駄なく無理なく子どもを伸ばしていくという判断は相当に高度なもので、専門的な知識と経験が必要です。そうでなければ学習塾のビジネスは成り立ちません。

 さきほどお話しした五段飛びなのか、適切な最短距離なのかということは、表裏一体の関係にあります。以前に紹介した、直前期の「チート」との見分けも容易ではありません。保護者だけでは見抜くことができない、この境目を適切に判断することが非常に困難な作業でもあり、同時にそれこそが塾講師の腕の見せ所でもあります。

 ベテランの先生が経験と実績に基づいて慎重な判断をすると、「今、これをやっても合格できません」と伝えることが本当は受験生親子のためになる場合があります。しかし、実際には率直な指摘をするのが憚られるケースもあります。

 というのも、厳しい現実を伝えても保護者が納得するとは限らず、「価値観が合わない塾だ」と判断して退塾してしまうリスクもあるからです。

 とはいえ、夏期講習が終われば、もはや耳になじみの良いことだけを言って気持ちよく過ごしてもらう時期は終わりです。保護者は本音で塾講師に質問し、塾講師もそれに本音で答える。その中で子どもをより良い方向に導いていかなければならない時期に入っているのです。信頼できる塾の先生と密接な連携を取って、秋以降の学習を有意義なものにして下さい。

夏期講習に“ただ通っただけ”の子が秋以降に伸びる納得のワケ
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