その指導方法に問題がなかったかと聞かれれば、たぶんあったのだが、彼は私たちに信じるに足る姿を見せ、私たちにがむしゃらに頑張る気持ちを持たせることに成功していたのである。

偏差値の高い学校は
荒れるヤンキー高と同じ

 上位進学校の生徒というのは、はっきり言って教師をすぐにナメてしまう傾向がある。

 東大・京大・国公立医学部を目指しているのだから、教師がそれ以下の大学だと微妙な感じになるし、さらに教え方まで微妙だと「もうええってお前……」みたいな感じが教室中に充満する。

 私は中学時代とは違い高校ではわりと模範的な態度で授業を受けるタイプの生徒になっており、それほど「もうええって」感は出さなかったつもりだし、大体の先生のことは優秀だと思っていた。

 しかし、やはりそうではない生徒もそこそこいて、先生のことをイマイチだと判断すると授業中に勉強の内容でケンカを売る生徒もいたし、完全に捨てて寝る生徒もいたし、別の教科の内職をする生徒もいた。

 低偏差値のヤンキー校も当然荒れているのだが、実は上位進学校も別の意味で「荒れている」と言えるのだ。この事実は教師を志す方にも知っておいてもらいたい。

 受験に関係のない科目の先生はかなりかわいそうで、家庭科の先生などはあまりにもみんなが話を聞かないので、「お料理のこともわかったほうがモテますよぉ」とか「お裁縫ができる男性、素敵だと思いませんか?」とか、一生懸命興味を持たせようとしていたのだが、どうがんばっても全員青チャートをやってしまうのでしまいにはブチギレて、「これが本当に日本を背負って立つ人たちの姿なのでしょうか!?先生は、あなたたちのような人間に国を任せたくはありません!!」と叫んでいたし、体育の水泳の時間、多くの生徒がズル休みで見学して英単語クイズに興じていたので、体育教師が「お前らみたいなもんはほんまもんのクソじゃ!クソみたいな人間はどんなええ大学行ってもクソのままじゃ!!」とキレ散らかしたこともあったし、音楽の時間には居眠りしている生徒が多すぎて廊下に立たされまくっていたし、居眠りや内職が度を越したために「お前、もうここで宇多田ヒカルのファーストラブ歌え!ファーストラブ!」と言われてマジで歌わされた奴もいた。