英語力に自信があり、大学ではEMI実施学部(EMI:English-Medium Instructionの略。人口の大多数の母語が英語ではない国や地域で、英語を使って教科を教えること)へ入学した、のぞむ、あすか、じゅん、そして帰国子女のみずき。海外留学生や帰国子女と共に英語で学ぶ環境のなかで感じた大学への不満、グローバル教育を受けた学生たちのリアルな感想とは。本稿は、佐々木テレサ 福島青史『英語ヒエラルキー グローバル人材教育を受けた学生はなぜ不安なのか』(光文社新書)の一部を抜粋・編集したものです。
授業の内容が広く浅い
リベラルアーツ教育の弊害
拡大画像表示
EMI実施学部に対する悪い評価を述べていく。
一番多く挙がった当該学部に対する悪い評価は、〈内容が薄い〉〈学びが浅い〉というものだった。これはEMI実施学部の卒業生全員から出た意見である。
筆者:なぜ?
みずき:だって大したことしてないよね。
のぞむ:(授業の)内容はちょっと薄いなって感じてた。(英語が)分かんないけど、薄いなって。
のぞむのように、全員が入学当初から、授業内容が浅い・薄いと感じていたようだった。英語能力が成熟していない状態でも、薄いと思ってしまう内容だったわけだ。
筆者:大学での学びはちょっと薄い?
あすか:うん。そう。
みずきとあすかは、受講していた授業の内容を詳しく思い出せないという。あすかが「その程度だった」と言っているように、深い学びは得られなかったと思われる。
授業の内容が薄い・浅いと感じる理由は、インタビューから2つあるようだった。一つは、リベラルアーツ教育を行なっているため〈体系的に学ぶことができない〉からだ。じゅんは、同じ大学の商学部に在学中の妹が受講しているカリキュラムと、自身が受講したカリキュラムを比較して、次のように述べている。
じゅん:結局はさ、たとえば妹を見てると、商学部だけど、その、体系的に学んでいくんだよね。ある程度、その人の年次だったらこれ取って、この年次でこれ取ってっていう、縦に積み上げていくような知識の付け方をする。
じゅん:けど、うちらの場合って、その浅く広く取っていく中で、どうしてもそうは言いつつ、全部イントロ(1年時に初めに取る選択教養科目。Introduction〔初級〕の授業の略)から始めるわけじゃなくて、イントロから始められるものと、唐突に上級科目(初級科目、中級科目履修後に履修できる選択科目)を取るみたいな。で、初めてのものを取るみたいなこともできちゃうわけじゃん。それはちょっとばらつきがあまりにもあるから、ある程度、制約があってもよかったんじゃないかな。