作品賞ほか監督賞、主演女優賞、脚本賞、編集賞の5部門を制したのは『ANORA アノーラ』。主演男優賞、撮影賞、作曲賞は『ブルータリスト』。助演女優賞と主題歌賞は『エミリア・ペレス』。助演男優賞は『リアル・ペイン〜心の旅〜』。脚色賞は『教皇選挙』である。

 ちなみに、『アノーラ』はカンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールを受賞。『エミリア・ペレス』はアカデミー賞で最多13部門ノミネートされた。

今年のアカデミー賞作品賞だけでなく監督賞、主演女優賞、脚本賞、編集賞も獲得した『ANORA アノーラ』今年のアカデミー賞作品賞だけでなく監督賞、主演女優賞、脚本賞、編集賞も獲得した『ANORA アノーラ』。日本ではR18+で公開された(公式サイトより)

 正直、『教皇選挙』以外は「初めて聞いた」という方が結構多いのではないだろうか。無理もない。公平に言って、4作品とも日本ではあまり話題になっていなかった。2023年のハリウッド脚本家ストライキによって、2024年のアメリカ映画が大作不足だったという背景もあるが、それを差し引いても、話題に上らなすぎだ。

『教皇選挙』にしても、映画の公開とローマ教皇フランシスコの死去が奇跡的に重なったことが後押しとなって話題となり、国内で「異例のスマッシュヒット」などと報じられたが、それでも興行収入は「10億円超」。8月27日時点の『国宝』の興行収入(115億円)の10分の1以下である。

「洋画:邦画」の年間興行収入は30年で完全に逆転

 実際、若年層を中心とした日本人の洋画離れはとどまるところを知らない。2024年の年間興行収入の比率は、邦画75.3%に対して洋画24.7%。1990年代は邦画の比率が30~40%台を推移していたので、30年で完全に逆転したわけだ。

 参考までに、30年ほど前のアカデミー作品賞受賞作を列記しておく。どれくらい「知っている」「聞いたことがある」だろうか。

1990年『ドライビングMissデイジー』
1991年『ダンス・ウィズ・ウルブズ』
1992年『羊たちの沈黙』
1993年『許されざる者』
1994年『シンドラーのリスト』
1995年『フォレスト・ガンプ/一期一会』
1996年『ブレイブハート』
1997年『イングリッシュ・ペイシェント』
1998年『タイタニック』
1999年『恋におちたシェイクスピア』