彼らは、活動時に沈黙して安静休息時に興奮するこの脳領域を「デフォルト・モード・ネットワーク」と名づけました。デフォルト(default)には「欠席、債務不履行」などの意味がありますが、ここでは「欠席」ととらえるのが適切でしょう。脳の主要な部位が活発に活動しているときに静かに休んでいることから、“欠席状態”というわけです。

過去や未来に思いをめぐらせて
自分に向き合う脳領域

 デフォルト・モード・ネットワークの解剖学的な部位を図5-2、図5-3に示します。前頭葉と頭頂葉の内側面に中心的な部位があり、さらに前頭葉外側面と側頭葉の一部分が含まれています。解剖学用語でいうと、内側前頭前野・前帯状皮質、後部帯状回・楔前部、頭頂連合野の後半部(角回近傍部)、中側頭回などから成り立っています。

 シュルマンやレイクルらは2001年、デフォルト・モード・ネットワークの機能とはたらきについて見解を発表しました。デフォルト・モード・ネットワークは、自分について振り返り、自分の過去や未来を思い浮かべながら、現在の自分について考える脳機構であると提唱したのです。

 レイクルらの見解をもう少し詳しく説明しましょう。

 彼らが提唱したのは、デフォルト・モード・ネットワークは、“愚痴”のようなとりとめのない思考に始まり、徐々に過去や未来に思いをめぐらせて、自分と自分の人生を考える脳領域であるという仮説です。

図表:デフォルト・モード・ネットワークの立体図(レイクル教授によるシェーマ図)同書より転載
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図表:デフォルト・モード・ネットワーク同書より転載
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