正論ばかり言って、「職場で浮いてしまう人」の悲しい共通点とは?
「1つに絞るから、いちばん伝わる」
戦略コンサル、シリコンバレーの経営者、MBAホルダーetc、結果を出す人たちは何をやっているのか?
答えは、「伝える内容を1つに絞り込み、1メッセージで伝え、人を動かす」こと。
本連載は、プレゼン、会議、資料作成、面接、フィードバックなど、あらゆるビジネスシーンで一生役立つ「究極にシンプルな伝え方」の技術を解説するものだ。
世界最高峰のビジネススクール、INSEADでMBAを取得し、戦略コンサルのA.T.カーニーで活躍。現在は事業会社のCSO(最高戦略責任者)やCEO特別補佐を歴任しながら、大学教授という立場でも幅広く活躍する杉野幹人氏が語る。新刊『1メッセージ 究極にシンプルな伝え方』の著者でもある。

正論ばかり言って、「職場で浮いてしまう人」の共通点は?
新商品を企画するためのアイディア出し会議をしていたとする。上司から「わたしたちは、どんな商品を企画するとよいか?遠慮なく意見して欲しい」と口火が切られる。そこで、ある怒られるのが苦手で慎重な若手社員がこう意見した。
「お客様のニーズを捉えた商品をつくるべきです」
上司は困った。正しいけど、正し過ぎて当たり前だからだ。
なので、上司は問い返してみた。
「それは正しいと思うけど、そのお客様のニーズを捉えた商品とは具体的にはどんなものかな?」
その慎重な若手社員は「正しい」と言われて嬉しくなり、今度はこう答えた。
「付加価値の高い商品をつくるべきです」
上司はますます困った。これも正しいけど、同じく正し過ぎて当たり前で、意味がないからだ。意味がないだけならまだよい。
正しいので、間違っているわけではないから否定もできない。なので、その意見が「まあそうだけど」と言いっ放しになり、議論が進まなくなるのだ。
結局、会議は「正しいけど意味がない」意見で場がくじけてしまい、新しいアイディアは出ずに終わった。
反論可能性がない意見を言っていないか?
この「お客様のニーズを捉えた商品をつくるべきです」や「付加価値の高い商品をつくるべきです」のような意見を「反論可能性」がない意見と呼ぶ。
「反論可能性」とは、議論によって反論できる余地である。反論可能性がない意見は、正しいが、相手に伝えても意味がない。
この「お客様のニーズを捉えた商品をつくるべきです」も「付加価値の高い商品をつくるべきです」も、どちらも反論できる余地はない。正しい。
しかし、どちらも反論の余地がないほど正しいが、正し過ぎて相手にとっても当たり前で、それらの意見をもらったところで、どちらも相手にとっては意味がない。
どちらの意見も、相手にとって当たり前なので、それらの意見をもらったところで、会議の目的の新商品の企画が進まないのだ。
反論可能性のない意見とは、プロのサッカーの試合の解説で「今日は勝ちたい試合ですね」と言うようなものだ。プロであれば、どの試合も「勝ちたい試合」なはずで「負けたい試合」などないだろう。なので正しいが、正し過ぎて当たり前で、聞いている人にとってはなんの意味もないのだ。
反論可能性のない意見は、意味がないだけならまだよい。
正しいので、間違っているわけではないから否定もできない。なので、その意見が言いっ放しになる。議論も進まなくもなる。なので、さきほどの会議の例では、上司も困り、会議も進まなくなってしまっていた。
正論よりも、相手にとって意味のある意見を言おう
メッセージとは、相手にとって意味のある意見だ。
そうであれば、意味のあるものとするために、正論は正論でも“正し過ぎて当たり前”の意見をすることに逃げずに、自分の意見の反論可能性を確認しよう。
伝えたい相手に反論可能性のないメッセージを言っては、単に短いだけの意味のない一文になってしまい、人を動かすメッセージにはならないのだ。
たかが1メッセージ、されど1メッセージなのだ。
(本原稿は『1メッセージ 究極にシンプルな伝え方』を一部抜粋・加筆したものです)