「本当にできる人」に見える瞬間

一方で、「この子は本当にできる」と感じさせる学生には、特別なエピソードがあるわけではありません。むしろ、ごく普通のアルバイトやサークルの経験から語る人が多いのです。

たとえば同じ「グローバルに活躍したい」という答えでも、「なんとなくかっこいいから」ではなく、「高校時代に短期留学をしたとき、言葉が通じず悔しい思いをした。そのとき助けてくれた現地の友人の姿に憧れて、自分も将来的に国を問わず協働できる人材になりたいと思った」などと経験と合わせて語れる人は、聞き手の胸にストンと落ちます。

特別に大きな実績や派手な経験である必要はありません。むしろ「自分にとって意味があった」と感じた瞬間をどう解釈し、自分の言葉で語れるか。その深さこそが、面接官にとっての“できる人”の証なのです。

面接官が見ているのは「理由の深さ」

面接官が知りたいのは、「どれだけ立派なことを言えるか」ではありません。表面的な人は「キーワード」で語る。本当にできる人は「理由」で語る。

これが両者を分ける決定的な違いです。

「アルバイトで接客を頑張りました」と言うだけなら誰にでも言えます。でも「最初はミスばかりで怒られてばかりだったけれど、店長から“笑顔だけはお前の武器だ”と言われて、自分なりに工夫するうちに常連のお客さんが名前を覚えてくれるようになった。そこから自信がついて、もっと改善提案をするようになった」という話なら、その人の人柄や成長がリアルに伝わってきます。

つまり、面接官は「あなたの経験があなた自身にどんな意味を持ち、そこから何を学んだのか」を聞きたいのです。その理由が深ければ深いほど、言葉は自然と力を持ち、相手に伝わります。

どんな人でもチャンスがあるのが就活

ここで大切なのは、派手な主役経験がなくても問題ないということです。「サークルの代表を務めていない」「留学経験もない」「特別な受賞歴もない」。そんなふうに、自分には語れることが少ないと考えている脇役型の人ほど、“理由の深さ”に目を向けると内定へのチャンスが広がっているのです。

たとえば「裏方でいつも雑務をやっていた」という経験だって、「人が気持ちよく動ける環境を作ることに喜びを感じた」と言えれば、立派な強みになります。実際に、そうした脇役的な経験から、自分の価値観を語れる人ほど、面接官の印象に強く残ります。

大切なのは、どんな経験をしたかよりも、その経験をどう意味づけるか。
派手な肩書きがなくても、自分にとっての意味を掘り下げれば、就活では十分にチャンスがあるのです。

みなさんの就活を、心から応援しています。

(本記事は『ありのままの自分で、内定につながる 脇役さんの就活攻略書』に関連する書き下ろしです