眞栄田郷敦に聞く、手塚治虫をモデルにした人物を演じる気持ち

え、いきなり!?しれっと命名「アンパンマン」、片仮名で統一されたワケにぐうの音も出ない【あんぱん第117回】

 ベレー帽に黒縁メガネで手嶌治虫を演じている眞栄田郷敦さんのコメントを紹介しよう。

――今回、漫画家・手塚治虫さんをモデルとした、手嶌治虫役としてオファーを受けたときのお気持ちと、演じる上で準備されたことを教えてください。 

「朝ドラで手塚治虫さんかぁ。めっちゃおもしろそう!」という気持ちでした。演じるにあたって、今残っている手塚さんのドキュメンタリー映像を見たり、書籍を読んだり、記念館に行ったり……。

 手塚さんがどんな人生を歩んできたのかを知るために、限られた時間の中で、できるだけインプットして。有名作品やターニングポイントとなった作品にも目を通しました。

 僕は特に『ブラック・ジャック』が好きですね。手塚さんは、ふだんは温厚でユーモアがあって、ニコニコしている印象なのですが、作品になるとすごくストイックで、並外れた集中力があって。本当に天才なんだなと実感しました。

 そういった人柄の部分や作品に対する姿勢は、演じる上で大事にしています。若いころの映像はなかったので、そこは想像を膨らませながら、知っている人柄を、少し初々しくしたような感じで演じられたらと思って臨みました

――実際に現場に入って、お芝居をされてみて、いかがですか? 

 やっぱり衣装を着てメイクをすると、イメージが湧きますね。意外と見た目は手塚さんに似てるんじゃないかなと思っているのですが、いかがでしょうか?(笑) 人柄の部分は、手塚さんの物事に集中する性格を細かく表現しつつ、少し早口な部分も意識して演じています。
 
 最初は演じられるのが楽しみだったのですが、いざやってみると難しくて、本当に大変です(笑)。手塚さんのイメージを残しながら、この『あんぱん』の中では何を表現しなければならないのか、嵩さんにとってどういう存在であるべきなのかを考えなくてはならないので……。

 いつもはあまり緊張しないタイプなのですが、撮影も緊張しました。やっぱり誰もが知っている偉大な人物を演じることのプレッシャーも大きいですし、最後まで芝居の正解が分からないんですよ。

 普段の芝居は正解がないので、作品として魅力的な方向に自分で持っていけばいいのですが、今回はいろんなバランスを取らないといけないので。悩むこともたくさんありますが、とにかく自分だからできる手嶌治虫をやろう。そんな思いで、役と向き合っています。

――嵩にとって、手嶌治虫はどんな存在でありたいと思いますか? 

 実際の手塚さんは、“神様みたいな人だけど、みんなのところに降りてきてくれる神様”だと表現されていた方がいたので、嵩さんにとっての天才でありつつも、謙虚さを持って演じたいなと。その塩梅はすごく悩みました。

 一番大事なのは、嵩さんの人生をどう色づけられるかだと思うので、少ないシーンの中で、手嶌治虫としての魅力を見せながら、嵩さんに大きな影響を与えられる人物になれていたらうれしいです。


 圧倒的カリスマ漫画家・手塚治虫をモデルにした人物だから、どうしたって注目される存在になるところ、「一番大事なのは、嵩さんの人生をどう色づけられるかだと思う」「嵩さんにとっての天才でありつつも、謙虚さを持って演じたい」と考えている眞栄田郷敦さんこそ、謙虚さを持った俳優だと感じた。それが手嶌治虫によく出ている。

 眞栄田さんが姿勢よくしているところにも手塚治虫(手嶌治虫)の漫画に対する強い信念を感じる。

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