キングメーカーの座を争ってきた
自民党内の3人の人物
振り返れば、これまで自民党内でキングメーカーの座を争ってきたのは、麻生氏と菅氏、それに政界を引退した二階俊博氏であった。
二階氏の場合、2016年6月から2021年8月まで、実に5年余りにわたって幹事長を務め、安倍晋三元首相の長期政権を主導し、安倍氏退陣の後は、菅氏を担いで首相に押し上げるキングメーカーぶりを見せている。
他方で、麻生氏と菅氏は安倍政権下において、麻生氏が副総理兼財務相、菅氏が官房長官とナンバー2争いを繰り広げてきた。
その後、菅政権下で麻生氏は安倍政権時代と同じポストに甘んじたものの、2021年9月、菅氏が次期総裁選に出馬しないと表明するや、岸田文雄氏を担いで巻き返し、安倍氏が支援した高市早苗氏や菅氏が後押しした河野太郎氏を破って、岸田政権樹立の立役者となった。
こうして見ると、麻生氏は、二階氏や菅氏と抜きつ抜かれつを繰り返しながら、政府や自民党の要職に在り続け、絶大な権力を保持してきた政治家ということになる。
しかし、2024年9月に行われた自民党総裁選では、高市氏を支援した麻生氏と小泉進次郎氏を担いだ菅氏はともに石破氏に敗れた。麻生氏は名誉職の最高顧問に祭り上げられ、菅氏も自民党副総裁という存在感が薄いポストに就任したことで、キングメーカーの座から滑り落ちた。
体調面で不安を抱える菅氏はまだしも、「まだまだやれる」(前出の麻生派衆議院議員)という自負がある麻生氏のことだ。冷や飯を食べることわずか1年で回ってきた機会を逃すはずがない。
まず、総裁選の前倒し決定で、事実上、石破氏を退陣に追い込み、前回同様、高市氏か、あるいは小林鷹之氏や茂木敏充氏らの中から勝てる候補を選んで、唯一残存する派閥を率いてキングメーカーの座を奪還しようと動くのは、当然の流れと言えるだろう。