襲名が決まった喜久雄と半二郎が訪れた地

上七軒歌舞練場上七軒歌舞練場(上京区)。春の「北野をどり」、秋の「寿会」の舞踊公演のほか、夏恒例のビアガーデン開催時には館内に入ることができる

 バス停「上七軒」から徒歩3分の「上七軒(かみしちけん)歌舞練場」は、「浪花座」の舞台袖や舞台として登場しています。喜久雄たちのお稽古シーン、事故でケガを負った半二郎の代役で『曽根崎心中』を演じる喜久雄を客席から見つめる俊介と春江のシーンなどがここで撮影されたそうです。

  「血筋」をも凌駕(りょうが)する喜久雄の才能に打ちひしがれた俊介が姿を消した後、喜久雄は三代目「花井半二郎」を、半二郎は名跡「花井白虎」を襲名することが決まり、半二郎と喜久雄の二人がそろって舞を奉納したシーンは、厄よけで名高い今宮神社(北区)の拝殿で撮影されました。

 さらに、二人がそれぞれ人力車に乗って沿道の祝福を浴びながらお練りを繰り広げるシーン。こちらは今宮神社の東参道で、風情ある石畳の道に向い合わせに立つ、門前茶屋の一文字屋和輔とかざりやも登場していました。この2店では、食べれば厄除けのご利益があるという「あぶり餅」がいただけます。今宮通沿いの楼門から境内に入り、舞殿を経てご本殿に手を合わせた後は、旧正門に当たる東門をくぐり、できたて熱々のあぶり餅をいただくというのがおすすめルートです。

 お練りの前、小さなお社で手を合わせた喜久雄が、久しぶりに再会した幼い娘に「何をお願いしたん?」と問われ、「神様と話してたんとちゃうで。悪魔と取引してたんや」と答えるシーンがありました。そのお社は、先述の上七軒歌舞練場のすぐそばにたたずむ「光盛大明神」です。界隈を旅する者が足を止めることはほとんどなかった小さなお社ですが、これからは“聖地”として注目を浴びることになるのでしょう。

今宮神社喜久雄と半二郎のお練りのシーンが撮影された今宮神社の東参道