スタートアップ投資家だけが知る「本当の報酬」とは?
東京大学大学院卒業後、ゴールドマン・サックスに入社。30代にして上位数パーセントの幹部、マネージング・ディレクターに就任し、アジアのトレーディングチームを率い、巨額の利益を上げた。その後、200兆円超の運用残高を誇る世界有数の機関投資家・ゆうちょ銀行で投資戦略を牽引。そんなマーケットの最前線を知り尽くしたトップトレーダーが、個人投資家が一生使える「オルカン」「S&P500」の“次の投資術”を徹底指南した初の著書『最後に勝つ投資術【実践バイブル】 ゴールドマン・サックスの元トップトレーダーが明かす「株式投資のサバイバル戦略』(ダイヤモンド社)。投資初心者でも実践できるよう、徹底的にわかりやすく投資手法を体系化。ゴールドマン・サックス仕込みの「投資思考」「オルカン+4資産均等型」といった実践的なポートフォリオ(資産配分)の構築方法有望な個別株の見つけ方まで、すぐに役立つノウハウが満載!

【ゴールドマン・サックスの元トップトレーダーが教える】なぜ投資家は“丸損リスク”を負ってまで、スタートアップにお金を出すのか?Photo: Adobe Stock

会社の未来を売る、という選択

株式は会社の「所有権証書」であり、株式を買うことで、会社が利益を生めるようになったら、その利益のなかから「配当金」を受け取れる可能性が出てきます。

ただし、すでに実績のある会社の株式とは違い、起業した時点のスタートアップは失敗するリスクのほうが高いです。もし会社がつぶれたり、利益を上げられなかったりすれば、株主が出資したお金は“丸損”になってしまいます。

お金で「未来の時間」を買う

それでもスタートアップが出資を受けられるのは、その事業プランの可能性に期待があるからです。

「時間を買う」という意味で、起業した時点から人材・設備に投資をしてほしい。株式を発行して出資を受け入れ、事業成長を加速させることができれば、やがて利益を生み、出資してくれた株主に配当金としてリターンを返せる。

だから私の会社に出資していただきたい――このように起業家は、自分の事業プランを示し、株式による資金調達に取り組むことで、資金不足の問題を解決できるのです。

血を分ける覚悟
夢を共有する「運命共同体」

もしも起業家の事業プランに賛同してくれる出資者が現れたら、会社は出資の対価として株式を発行するわけですが、起業家にとって、これから心血を注いで大きくしようとする会社の所有権を引きわたすのは重大なことです。

たとえ一部であっても、会社の所有権を譲るのは、自分の血を分けるような行為ともいえます。

こうした関係にあるため、スタートアップの起業家と投資家は、会社が大きくなる夢を共有する運命共同体です。ビジネスが成功して利益を出せるようになった暁には、起業家と投資家はともに大きな経済的便益を享受することになりますが、逆に失敗すればともに損害を受けることになります。