投資で成功するための超基本を教えよう。
東京大学大学院卒業後、ゴールドマン・サックスに入社。30代にして上位数パーセントの幹部、マネージング・ディレクターに就任し、アジアのトレーディングチームを率い、巨額の利益を上げた。その後、200兆円超の運用残高を誇る世界有数の機関投資家・ゆうちょ銀行で投資戦略を牽引。そんなマーケットの最前線を知り尽くしたトップトレーダーが、個人投資家が一生使える「オルカン」「S&P500」の“次の投資術”を徹底指南した初の著書『最後に勝つ投資術【実践バイブル】 ゴールドマン・サックスの元トップトレーダーが明かす「株式投資のサバイバル戦略』(ダイヤモンド社)。投資初心者でも実践できるよう、徹底的にわかりやすく投資手法を体系化。ゴールドマン・サックス仕込みの「投資思考」や「オルカン+4資産均等型」といった実践的なポートフォリオ(資産配分)の構築方法、有望な個別株の見つけ方まで、すぐに役立つノウハウが満載!

東大生に教える投資の「本質」
私が東大生などに向けた金融教育の授業をするとき、いつも話していることをお伝えしましょう。
昨今の起業ブームの波に乗って、私が「宇根自動車」という自動車メーカーを起業するとします。
事業を開始するには、自動車の設計について研究して商品を開発しなくてはなりませんし、資材を調達する必要もあります。さらには人材を採用したり、製造のための機械・設備を買ったりするためにお金がかかります。
立ちはだかる「資金」という名の巨大な壁
かなり大がかりな資金が必要ですし、自己資金ではまったく足りません。でも、どこからか資金を調達することができれば、事業を始められます。
そこで私は、まず銀行に融資の相談をすることにしました。銀行からお金を借りられれば、資金不足を解決できそうです。ところが、私が相談をした銀行員は、私の相談を聞くや否や眉間にしわを寄せました。
そして、「宇根さんのやる気はわかりますが、自動車製造の実績がないですよね」「お金を貸しても、期日までに返してもらえるかわからないですし、担保がないならお金は貸せません」と、けんもほろろに断られてしまいました。
安全だが、あまりに遠い道のり
たしかに自動車製造に対する私の挑戦がうまくいくかは、まったくの未知数ですから、銀行としてはお金を貸すのはリスクが高すぎると判断したのでしょう。残念ですが、現実を受け入れるほかありません。
それでも、どうしても起業を諦められない私は、他の方法を探ることにしました。
お金を借りずに事業を始めるのはどうでしょうか? まずは少人数でコストをかけずに事業を始め、黒字経営で資金を少しずつ貯めていく方法であれば、「銀行にお金を返さなければいけない」と精神的プレッシャーを抱えることもありません。
時間は有限、ビジネスの展開は速い
でも、この選択にも問題があります。自己資金でできる事業にはどうしても限界があるので、成長が遅くなってしまいます。ましてや自動車製造はお金がかかるので、それなりの形にするだけで何十年もかかってしまうかもしれません。
人生は長いようで短い。そしてビジネスの展開は速いです。そんなにのんびりしていたら、いつまでたっても自動車メーカーとして世界に打って出られないでしょう。
振り出しに戻る―それでも夢は諦めない
やはり、自分が思い描いた事業プランを実現するには、どこかからお金を調達しなくてはならないようです。また振り出しに戻ってしまいました。
銀行は、「必ず返せる見込みがない」といってお金を貸してくれませんでしたし、借りる立場の私としても、返済を求められるのは不安です。
「返さなくていいお金」、そんな魔法はあるのか?
私は、「できれば、たくさんのお金を出してくれて、返済を求めてこない人がいたらいいのに……」と考えますが、そんな都合のいい話があるのでしょうか?
それがあるのです。ここで登場するのが「株式」です。
銀行ではお金を借りられないとしても、ここで起業を諦めるのは早すぎます。なぜなら、起業家のビジネスプランがしっかりしたものであれば、株式を発行することで資金を得られるからです。