多くの日本人の死因となっている「大血管病」は、血管の老化と生活習慣病の合わせ技で引き起こされる。特集『血管の老化を防ぐ! 血管強化術』(全8回)は、前半の4回で血管老化と病気の関係について、後半の4回で抗血管老化策について取り上げる。#2では、高血圧や脂質異常症から大血管病を発症する仕組みとともに、血圧値とコレステロール値のそれぞれを基にした発症リスクのチェックリストをお届けする。(医学ライター 井手ゆきえ)
血圧を人為的に下げて
大血管病の前に踏みとどまれる地点は?
日本人の死因の第2位の心疾患と第4位の脳血管疾患。これら「大血管病」は、血管の老化と生活習慣病、すなわち(1)高血圧、(2)動脈硬化と脂質異常症(高コレステロール血症)、(3)高血糖と糖尿病の合わせ技で悪化する。
65歳以上人口の2人に1人が発症する高血圧は、大血管病の独立した危険因子だ。
血圧とは、血液が動脈の内壁を押す力を指す。動脈の血管年齢が若く、血管内皮細胞が放出する血管拡張物質である一酸化窒素(NO)がたっぷり供給されているうちは、血管は圧力に合わせて柔軟に広がり、血管壁にかかる力が低下する。血圧は低めで安定しているわけだ。
ところが血管の老化で血管が硬くなった上に、NOの供給も滞りがちになると、血管壁をかなり強い力で押し広げなければ血液が流れない。ホースで水まきをする際、ホースが古く硬ければ、水の通りを良くするために水圧を上げる、あれと同じ原理である。
そして血圧が高い状態とは、血管内が常に強いストレスにさらされていることを意味する。その刺激で血管の老化がますます進み、血流を確保するために、血圧がさらに上がるという悪循環に突入してしまうのだ。
ポンプ役の心臓も常に最大出力を強いられるため徐々に疲弊し、今度は心筋の炎症と修復というリモデリングが加速していく。そのままでは、心筋が分厚くなりポンプ機能を果たせなくなる心肥大や、出力低下によって心不全を起こしかねない。
では、人為的に血圧を下げ、まだ踏みとどまれる地点はどこだろうか。