シンガポール国立大学(NUS)リー・クアンユー公共政策大学院の「アジア地政学プログラム」は、日本や東南アジアで活躍するビジネスリーダーや官僚などが多数参加する超人気講座。同講座を主宰する田村耕太郎氏の最新刊、君はなぜ学ばないのか?』(ダイヤモンド社)は、その人気講座のエッセンスと精神を凝縮した一冊。私たちは今、世界が大きく変わろうとする歴史的な大転換点に直面しています。激変の時代を生き抜くために不可欠な「学び」とは何か? 本連載では、この激変の時代を楽しく幸せにたくましく生き抜くためのマインドセットと、具体的な学びの内容について、同書から抜粋・編集してお届けします。

死ぬまで学び続けることが必要なワケPhoto: Adobe Stock

世界は永遠に変化し続けている

 私たちが、永遠に学びを続ける必要があるのは、世界が永遠に変化し続けるからだ。

・世界は変化し続けるので、それに対応して自分も変化する必要がある
・その変化の方法を自分で決めるコンパスになるのが学びである
・人生は長くなり、引退して年金だけで暮らしていくのは難しくなる
・いやでもギリギリまで働き、稼ぎ続けるしかなくなる
・認知機能の維持向上のためにも働き続けることがベスト
・今後の働き方の基本は、AIを人間らしさでリードするしかない

 世界が変化するのは、当たり前だ。

 それは世界がある地球、それを包む宇宙が変化しているからだ。誕生して138億年と言われる宇宙自体が、光のスピードを超える速さで変化している。

 温暖化が危惧される地球も、かつて温暖化や寒冷化を幾度も経験しており、常に環境は変化している。大陸の形も大きさも、地球の時間スケールで言えば、常に変わっている。

 恐竜が闊歩していたジュラ紀や白亜紀の地球の平均気温は28度といわれる。その温度なので両極に氷はなかった。海面の水位は、今より60メートル以上も高かった。

 大陸も、今のように6つに分かれておらず、恐竜が出現した後期三畳紀には、一つの巨大大陸パンゲアのみだった。

 しかし、中期ジュラ紀に入るとパンゲアの分裂が進み、北の「ローラシア大陸」と南の「ゴンドワナ大陸」に分かれ始めた。その後の白亜紀末にさらに大陸の分裂が進み、現在の大陸配置に近づいた。

国境線も平和も経済も
すべてが変わっていく

 そして、人類が誕生してからも、農業、青銅器や鉄器の発明、蒸気機関や電気の発明や発見、窒素肥料や抗生物質の発明等があった。

 つまり、人類の余命も人口も、働き方も激変が常である。

 産業革命以降は、食糧生産技術と医療技術と公衆衛生の発達により、二度の悲惨な世界大戦を経ても、世界人口は増え続けている。

 経済学や、それを活かした各国の公共政策や国際機関の活動で、中国を中心に急速に貧困も減っている。

 もちろん、サハラより南の地域を中心にアフリカでは、貧困は根強く増えている場所もあるが世界的に貧困人口は劇的に減った。平和も国境線も、当時の国情や国力がバランスした場所となっている。

 しかし、その均衡が崩れると、国境線に挑戦する国が現れ、新たなバランスが確定するまで、戦争等の不幸なイベントは続く。

 今の国境線を支持する人を中心に、「平和がいい」という人が多いが、それは「当時の国情や国力で決められたもの」で一種の既得権益である。

 既得権益に不満を持つ勢力が、それに挑戦する力を得た場合、特に国境に接する双方が違うナラティブ(その国の物語)を信じている場合は、国家同士または、民族間の総力戦になる場合がある。ロシアとウクライナの紛争が、その例である。

 もし戦争を仕掛けたロシアが、戦前よりも有利な形で国境線を画定できたとしたらどうなるか? 中国や北朝鮮に「力による現状変更は勝てば認められるのか」との自信を植え付けてしまう。

 そうなるとトランプ大統領引退後、満を持して彼らが隣国に力で挑戦するきっかけになるかもしれない。

(本稿は『君はなぜ学ばないのか?』の一部を抜粋・編集したものです)

田村耕太郎(たむら・こうたろう)
シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院 兼任教授、カリフォルニア大学サンディエゴ校グローバル・リーダーシップ・インスティテュート フェロー、一橋ビジネススクール 客員教授(2022~2026年)。元参議院議員。早稲田大学卒業後、慶應義塾大学大学院(MBA)、デューク大学法律大学院、イェール大学大学院修了。オックスフォード大学AMPおよび東京大学EMP修了。山一證券にてM&A仲介業務に従事。米国留学を経て大阪日日新聞社社長。2002年に初当選し、2010年まで参議院議員。第一次安倍内閣で内閣府大臣政務官(経済・財政、金融、再チャレンジ、地方分権)を務めた。
2010年イェール大学フェロー、2011年ハーバード大学リサーチアソシエイト、世界で最も多くのノーベル賞受賞者(29名)を輩出したシンクタンク「ランド研究所」で当時唯一の日本人研究員となる。2012年、日本人政治家で初めてハーバードビジネススクールのケース(事例)の主人公となる。ミルケン・インスティテュート 前アジアフェロー。
2014年より、シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院兼任教授としてビジネスパーソン向け「アジア地政学プログラム」を運営し、25期にわたり600名を超えるビジネスリーダーたちが修了。2022年よりカリフォルニア大学サンディエゴ校においても「アメリカ地政学プログラム」を主宰。
CNBCコメンテーター、世界最大のインド系インターナショナルスクールGIISのアドバイザリー・ボードメンバー。米国、シンガポール、イスラエル、アフリカのベンチャーキャピタルのリミテッド・パートナーを務める。OpenAI、Scale AI、SpaceX、Neuralink等、70社以上の世界のテクノロジースタートアップに投資する個人投資家でもある。シリーズ累計91万部突破のベストセラー『頭に来てもアホとは戦うな!』など著書多数。