その「基準」を作りたい。そこでR&D部門(編集部注/リサーチ&ディベロップメントの略で、科学的なアプローチで動作解析を行い、選手のパフォーマンス向上を図る部門)が策定したのが「打撃検定」という新プログラムだった。

相手投手を完全に再現できる
アイピッチで4軍選手をテスト

 正式名称は「iPitchスマートピッチングマシン」、通称「アイピッチ」という打撃用マシンでは、トラックマン(編集部注/デンマークのTRACKMAN社が開発した弾道測定器。投球や打球の速度、回転数、軌道などをレーダー技術で計測する)で集積した投手の球速、ボールの回転数、変化量などのデータを入力して、その投手を“完コピ”することができる。

 つまり、相手の主力級の投手の球を再現して、それを打つことができるのだ。あのロサンゼルス・ドジャース、大谷翔平も練習で活用しているという最新鋭の機器を、ソフトバンクは4軍制が発足した2023年から導入。本拠地・みずほPayPayドーム福岡と筑後に、それぞれ配備している。

 アイピッチを使った「打撃検定」は16段階。さらにアベレージ打者向けの「標準A」と中・長距離打者向けの「標準B」に分けられた上で、各段階のクリア条件が設定されている。

 この「アベレージタイプ」か「中・長距離タイプ」かは、硬式球での最大打球速度が、時速換算で「170キロ」を上回っているか、否かで決められている。

 2023年、MLB403選手における最速打球速度で4位に入った大谷翔平(当時ロサンゼルス・エンゼルス)は190.9キロ。シカゴ・カブスの鈴木誠也が188.4キロで35位。2022年のデータになるが、筒香嘉智は172.8キロで411人中353位という記録が残っている。

 NPBでは、ソフトバンクの主砲・柳田悠岐が2024年3月14日、巨人とのオープン戦で放ったホームランの最大打球速度が182キロ。阪神・佐藤輝明も2024年のシーズン中に同178キロの本塁打を放ち、日本ハム・万波中正は2024年10月の秋季練習中に同185キロをマークしたと伝えられている。