永井が担当スカウトの稲嶺誉(編集部注/関西地区担当スカウト。ソフトバンクホークスで内野手として2007年までプレー)に要請したのは、その「良さ」を証明する場の設定だった。
「一番、学校に視察に来られたのが、ソフトバンクさんでした」
神戸弘陵学園高野球部監督・岡本博公の証言は、ソフトバンクの熱意を裏付けている。
稲嶺が築いた同校との太いパイプを生かし、スカウト陣が一堂に集結する夏の甲子園期間中を活用し、村上のブルペン投球が視察できるように依頼。8月のある日、永井をはじめ、アマスカウトチーフの福山龍太郎ら、スカウト、球団スタッフら総勢8人で同校を訪問したという。

球のスピン量や回転軸など、球質をチェックできる測定機器「ラプソード」は神戸弘陵学園高にもあるのだが、自球団の機器をわざわざ学校まで持参してきたのは、12球団すべてが同校へ練習視察に来た中でも「ソフトバンクさんだけでした」と岡本が明かしてくれた。
モイネロ級のスピン量を見て
主観が合っていると確信
その“夏のデモンストレーション”の場で、村上が仰天の数字を連発するのだ。
ソフトバンクのラプソードでは、球速は144キロが最高だったという。ところが、驚くべき数字は、その「スピン量」だった。1分間の換算でストレートは2500回転を超え、スライダーだと同2600回転台をマークしたのだ。
MLBでも、ストレートの平均回転数は2200~2300前後、村上が投じたストレートは、だからメジャーのトップ級も上回っていることになる。