「ソフトバンクで5年間も出番ゼロ→日ハムで交流戦MVP」の水谷瞬が語る、環境の変化で大ブレークした理由Photo:SANKEI

ソフトバンクホークスは充実した育成施設や環境が整っている一方で、選手層が厚すぎるため、若手が1軍でチャンスをつかむのは難しい。実際、5年間で1軍出場ゼロだった水谷瞬は、現役ドラフトで日本ハムに移籍し、交流戦MVPを獲得する大ブレークを果たした。大活躍の理由を本人に訊くと、環境を変えてみることの大切さが見えてきた。※本稿は、喜瀬雅則『ソフトバンクホークス4軍制プロジェクトの正体 新世代の育成法と組織づくり』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。

出番ゼロの5年を経て
日ハムで覚醒した水谷瞬

 2023年12月に行われた第2回現役ドラフト(編集部注/出場機会に恵まれない現役選手を対象とした移籍制度。各球団が2人以上の選手をリストアップし、他球団がその選手を指名する)で、日本ハムに移籍した外野手の水谷瞬は、2018年のドラフト5位指名でソフトバンクに入団。

 しかし、在籍5年間で1軍出場の機会は、ついに一度も訪れなかった。そのくすぶり続けてきた未完の大器が、移籍初年度の2024年に大ブレークした。

 セ・パ交流戦で打率.438の交流戦史上最高打率を更新し、交流戦MVPも獲得。一流の証ともいえるオールスターにも、ファン投票によって決定する両リーグそれぞれの最後の1人「プラスワン」で選出。新天地でのプロ6年目は97試合出場、打率.287、9本塁打。年俸は2140万円増の推定2700万円、アップ率も仰天の382%となった。

 現役ドラフトの大成功例ともいわれる注目の男に、ソフトバンクでの5年間を振り返ってもらったのは、ソフトバンクとの優勝争いを繰り広げていた中、堂々の1軍の戦力としてかつての本拠地・みずほPayPayドーム福岡へ乗り込んできた9月18日、その試合前のことだった。