「株価チャートのクイズに答えるだけで株のセンスが身につく」――そんなユニークなスタイルで人気を集めているのが『株トレ──世界一楽しい「一問一答」株の教科書』です。発売以来、個人投資家の間で評判となり、多くの読者から高評価が寄せられています。著者は、ファンドマネジャーとして2000億円超を運用した経験を持つ楽天証券の窪田真之さん。この記事では、編集担当の視点から本書のポイントをお伝えします。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

株で資産を減らす人の9割がやっている「非合理的過ぎる買い方、売り方」Photo: Adobe Stock

買った値段に縛られると、合理的な投資判断ができない

「せっかく上がったんだから、今のうちに売っておこう」
「買った時より安く売るなんて、もったいない。戻ったら売ろう」

 こんなふうに「買った際の価格」を基準にして、売りの判断を下していませんか?

 株式投資において、資産を増やすために重要なのが、買い値にこだわらない売買の判断です。

 これは窪田さんが『株トレ』で強調している基本的な考え方です。

 多くの個人投資家が、株を売却する際に「買った時の値段」に縛られてしまいます。

 しかし、株価が買い値を上回っているか下回っているかに関係なく、「売るべき銘柄は売り、持つべき銘柄は持ち続ける」という判断を徹底すべきだと、窪田さんは伝えています。

買い値にこだわると、なぜ損するのか?

 次の2銘柄の週足チャートを見てください。

 あなたは、3週間前に両社の株を1,000円で100株ずつ購入しました。

 今、急遽資金が必要になりました。どちらを売りますか?

K社とL社、売るならどっち?『株トレ』より

 多くの個人投資家は「マイナスを出したくない」という気持ちから、左のK社を売り、右のL社を持ち続けてしまいがちです。

 しかしこれは、上昇している銘柄(良い株)を手放し、下落している銘柄(悪い株)を持ち続けるという不利な行動につながります。

損切りをためらわない

 買った株が下がると、「買ったばかりなのに……」「マイナスを確定したくない……」と感情に縛られてしまいます。

 ですが、すぐに損切りできたなら、損失を最小限に抑えられた証拠です。必ず勝てるトレードはないので、素早く損切りできたなら、「よし、うまくやった」と前向きに捉えていいのです。

 多くの投資家は「実現損益」でマイナスが出ることを避けたいばかりに、評価損益でマイナス(含み損)を抱えた株をいつまでも持ち続けてしまいます。

 しかし、実現損益も評価損益も「資産全体の増減」という観点では同じ。数字の見え方が違うだけなのです。

 だからこそ、「一度の売買で勝ったか負けたか」ではなく、ポートフォリオ全体を増やせるかどうかを基準に判断することが大切なのです。

 損切りをためらう心理を克服できるかどうかが、長期的に株で資産を増やせるかどうかの分岐点になります。