また、会議などで誰も発言しないとき、「みなさん、私と目を合わせないようにしていますね」などとクッション言葉で場を和ませるのもひとつのやり方。そのうえで「どなたか、ご意見ありますか?」と促すことで、話しやすい雰囲気を作れます。

 沈黙は、決して「会話が止まること」ではなく、「よりよい会話を生み出すための大切な時間」なのです。

ノートパソコンよりも
手を動かしてメモを取ろう

 悪気はなくても無意識のうちに、表情が乏しくなったり、反応が薄くなったりすることがあります。

 そんな無表情・無反応という悪い聞き方を直すには、メモを取るというテクニックも効果的です。手を動かすことで無反応の状態が解消され、話を聞いていることを相手に伝えられます。

 ただ、メモを取るときには注意したい点があります。メモを取ることばかりを意識していると、目線がずっと下向きになります。そうなると「相手の目を見ない」という、別の悪い聞き方に陥ってしまいます。

 最近は、記者会見などの会場はもちろん、打ち合わせの場で目の前に相手がいても、ノートパソコンばかり見ながら文字を打っている人も多いように感じます。

 話している人の表情をよく見ず、よく感じなくて、どのように「本質」をつかめるのでしょうか。話し手もメモの内容が気になってしまい、話すことに集中しにくくなります。

 対面の取材では、私はノートパソコンの利用を極力控えています。キーボードの音で相手の気が散る場合もあるからです。

 ずっと資料やノートを見たままでは、興味を持って聞いていることが伝わりません。そこでメモを取っていないときやメモを取る合間に、顔を上げて相手を見るように心がけましょう。

 では、副作用に注意しつつ、メモを取るにはどうすればよいのか。

 私が心がけているのは、「ここがポイントだ」と思った内容に絞ってメモを取ることです。普段は相手の話を聞くことを優先し、メモを取るのは控えています。そのうえで重要なポイントのときに絞ってメモを取ると、聞き漏らしていないと、相手に安心してもらえます。

 会話の内容を正確に記憶する必要があるときは、録音すれば対処できます。メモを取る際には、ペンを持つ手の動きを大きめにして、相手に伝わりやすくする工夫も凝らしたいものです。