こうした、イレギュラーな沈黙や静止のパフォーマンスは、聞き手の注目を自分に集中させたり、あるいは長い話に飽きた聞き手を目覚めさせたりする効果があります。

「間」を取るベストなタイミングは、自分が一番伝えたいキーワードを言う直前か、言った直後です。

「それは…(沈黙)…○○です」と、直前に間を取って意識を集中させてキーワードを聴いてもらいましょう。あるいはキーワードの直後に間を取って、その意味を聞き手の頭の中で咀嚼し、かみ締めてもらいましょう。いずれも、強く、印象に残してもらうためです。

相手に問いかける場面で
有効な間の取り方

 あるいは、聞き手に何かを問いかける場面に「間」を取るのも有効です。「なぜ、こんなことになってしまったと思いますか?……」などと聞き手に純粋に考えてもらうために数秒の間を取り、場の主導権を一時的に相手に委ねます。そして、一気に沈黙を破り、こちらが勢いよく話し出して主導権を奪い返すのです。空気が揺れ動くので、その場に緊張感をもたらすことができます。

 また、場がざわついていて、明らかに自分の話が聞いてもらえる環境ではないときにも「間」が効きます。壇上でじっと身じろぎもせずに何十秒か待ってみましょう。気付いた人から静かになっていき、いずれ時間がたつと静寂が訪れて、話し始める環境が出来上がります。

 時々、私は大学で授業を受け持つことがあります。授業の前に教室があまりに騒々しいときや、学生たちが話を聞くことに少し疲れてきたように感じるときは、じっと沈黙することがあります。すると、学生たちは「ん?」「何?」とこちらに注意を向けて集中し直し、教室に伝わる環境ができあがります。

 もっとも、これは「なんだ、偉そうな人だな」と思われるリスクもあるので時と場所は選んでください。

 いずれにせよ、話の途中で沈黙するのは勇気がいります。それでも、「何か話さなければ」「聞いてもらわなければ」と焦って早口で話し続けるより、要所要所で沈黙や間を使うほうが得策です。聞き手の注意を集め、より理解してもらいやすくなります。