「努力がムダになっていないかどうか」を見極める方法がある。誰よりも努力しているのにちっとも結果につながらない、最近、仕事で行き詰まりを感じる……。そんな人に試してもらいたい3つの方法を紹介しよう。
参考にしたのは、『起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法』だ。著者は、リクルートに入社し、25歳で社長、30歳で東証マザーズ上場、35歳で東証一部へ。創業以来12期連続で増収増益を達成した気鋭の起業家、株式会社じげん代表取締役社長執行役員CEO・平尾丈氏。
「起業家の思考法を身につけることで、正解がない時代に誰もが圧倒的成果を出すことができる」と語る平尾氏に、働き方のヒントを学ぼう。本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、「がんばっても報われないと感じたときにやるべきこと」を紹介する。

起業家の思考法Photo: Adobe Stock

「1万時間の法則」が当てはまる人と当てはまらない人

 ある分野で成功するには、最低でも1万時間の努力が必要だ。「1万時間の法則」と呼ばれるこの考え方は、アメリカの元新聞記者、マルコム・グラッドウェル氏が提唱したものだ。きっと、この法則を参考にスキルアップの計画を立てている人も多いだろう。

 1万時間とは、たとえば1日8時間労働を週5日間続けた場合、単純計算でだいたい4~5年ということになる。

 たしかに、スキルアップのためには、多くの練習量が必要だ。新入社員のうちから仕事を選んでいてはなかなか仕事ができるようにならないのと同じで、とくに初心者は、まずは手当たり次第に動いてみることが必要なこともあるだろう。

 しかし、『起業家の思考法』によれば、「1万時間の法則」も、当てはまる人と当てはまらない人がいるという。著者の平尾丈氏はこう語る。

この法則は、最近はナンセンスになってきているようで、たとえば職人が1万時間雑用をしても一人前にならないように、量質転換は問題や課題内容をよく理解して質から逆算し、質に転換するまでの十分ラインを把握したうえで設計しなければなりません。(P.165)

「とりあえず、やってみよう!」と打ち手をひとつしか考えないまま、なんとなく行動してしまってはいないだろうか。失敗したときの「次の一手」を用意していないせいで、次に何をすればいいかわからなくなり、時間ばかりが過ぎてしまってはいないだろうか?

 もし今、「けっこうがんばっているのに、なかなか成果につながらないな」「ある程度は伸びたけど、最近、壁にぶつかっている気がする」という悩みがあるのなら、「量の積み重ねによって、本当に質は向上しているのだろうか?」と、自身の働き方を見直してみてもいいかもしれない。

「量が質に転化する」タイミング3つのパターン

 本書によれば、「量」をこなすことで「質」が向上する「量質転化」のタイミングには、大きくわけて3つのパターンがあるという。

 1. 正比例パターン

 一つ目は、量を積み重ねれば積み重ねるほど、正比例で質に転化していくものだ。

 たとえば、「1年間、毎日かならず企画を1本考える」など、体力的にずっとやり続けなければならない課題は、成果が数値化されるので、わかりやすいだろう。

 目標を設定し、とにかく目標を超えるまでは必死にやり続ける。地道にコツコツ続ければ、成長曲線は右肩上がりに伸びていく。行動すればするだけ、質は向上し、成果に反映される。

 どんな課題も、このように、正比例で成果が出れば理想的だが、中には、成長曲線が見えづらいものもある。

 2. Jカーブパターン

 二つ目は、はじめのうちはどんなに量を積み重ねても質に転化せず、むしろ後退する、というパターンだ。ある一定のラインにきたときに質に転化しはじめ、それ以降は、急激に質を高めていく。

 成長曲線は、上の図のように、Jのカーブを描くのが、パターン2の特徴だ。

 大量の時間とエネルギーを費やしているのに、ちっとも成果につながらず、やり方が間違っているのか? と不安になる……。そんな経験がある人も多いだろう。

 本書の中では、この「Jカーブ」パターンとして、「広告宣伝によって認知度を高めなければならない課題」のモデルケースが解説されている。

その場合は二つ目のパターンでJカーブを受け入れなければなりません。顕在化するまでやらない限り、質に転化する前に埋没したまま終わってしまいます。その段階で諦めている人は多いので、さらに先にある質に転化する分岐点までやり続けなければ意味がないと知っておくべきです。(P.162-164)

 一つ目の「正比例」パターンと、二つ目の「Jカーブ」パターンは、どこかで経験したことがある、という人も多いのではないだろうか。

 さて、ところが、どちらのやり方も当てはまらない、試行錯誤しても目覚ましい成果が出ない……。そんなときに試してほしいのが、「A4ループ」というやり方だ。

 3. A4ループ

 「A4ループ」とは、その名のとおり、次の4つの「A」を繰り返し、仮説検証する、というやり方だ。

 ・Ask a question(問い)
 ・Assumption(仮の答え)
 ・Another Answer(別解を出す)
 ・Action(行動する)

 とくに注目してもらいたいのは、「Assumption(仮の答え)」「Another Answer(別解を出す)」という項目だ。

 たとえば、ある商品を売る営業の仕事をしていたとする。

 丁寧なプレゼン資料を作り、顧客に対して誰よりも多くアプローチしているにもかかわらず、受注率が低い。同僚がぐんぐん活躍しているのに比べ、自分は営業成績が伸び悩んでいる。

 そんなとき、おそらく多くの人は、「成績が伸びない原因・問題点を考える→その問題点を解決するにはどうすればいいか考える→思いついた案を実行する」という順序で考えているだろう。

 こういった考え方ももちろん大事なのだが、結局のところ、これを続けるだけでは、これまでやってきたことの延長線上にある「優等生案」しか出てこない。

 しっかりと量を積み重ね、努力をしているにもかかわらず天井にぶつかってしまったということは、今までとは角度の違う画期的な対策をしなければ、現状を打破することはできないタイミングが来た、ということではないだろうか。

 そこで鍵になるのが、「A4ループ」にもある「別解力」、つまり、別解を見出す力だ。

 圧倒的な成果を出せる人は、「成績が伸びない原因・問題点を考える(問い)→その問題点を解決するための、他の人がやりそうな「優等生案」を考える(仮の答え)→「仮の答え」を上回る「別解」を考える(別解を出す)→思いついた案を実行する(行動する)」というように、一般的に正攻法だと思われているやり方を少し変えたり、ずらしたりすることで、新たなアイデアを次々に生み出しているのである。

「真面目にコツコツ」が通用しなくなったらやるべきこと

 仕事のスピードを上げる、コストを低くする、労働時間を増やすなどの「優等生案」は、誰がやっても成果が出やすいというメリットがある一方で、誰でも思いつくから差が出にくいというデメリットもある。

 入社して以来、真面目にコツコツ努力を重ね、そのぶん、成果も出せていたが、キャリアを重ねるにつれて限界を感じるようになってきた。

 そんな人に必要なのは、「別解力」なのかもしれない。

 本書には、「優等生案」から発想を広げて「別解」を生み出すための31のヒントが掲載されている。

 ビジネスパーソンとしてさらに一皮剥けたいと思っている人に、ぜひ試してもらいたい一冊だ。