「就職した企業の顔ぶれはどうなのか」という声も聞かれそうだ。実は、ここまでの話は、すでに記事化したこともあり、そのたびごとに、氷河期世代の読者から、以下のような批判を浴びてきた。
「就職できたといっても、中小零細企業ばかりだ」
「正社員ではあったが、給与処遇で大きく差がついた」
この件も、現実は少々異なる。ここで簡略に結論を書いておこう。
実は就職氷河期も
大手企業は人材募集していた
私は長年、求人ビジネスの現場にいたが、就職氷河期も大手企業・人気ランキング100位以内の企業の掲載社数はそれなりに多かった。各企業とも、新卒求人広告の出稿回数を減らし、掲載ページ数もボリュームダウンしたが、名だたる企業が求人広告を掲載し続けてはいたのだ。「採用するのは中小零細企業ばかり」とか「大手といっても、飲食・物販・サービス系の企業が主」ということは断じてない。
ここでは、厚生労働省の雇用動向調査をもとに、入職時点で大手企業(従業員数1000人以上、以下同)に、大卒男女がどれだけ採用されていたかを明らかにする。
図表4を見てほしい。氷河期における大手企業の採用数は、おおよそ年9~11万人前後で推移し、就職した人を母数とすると、約3割にあたる。「中小零細ばかりだった」というのは、事実と明らかに異なる。

さすがにバブル期に比べれば氷河期の大手企業就職数は下がるが、それとて、世に言うほどの差にはなっていない。バブル期ピークでその数は14.5万人で、氷河期ボトムとの差はほぼ4割だ。氷河期に就活した当人からすれば、「4割減」は「天国と地獄の差」と体感したのは無理もない。