シンガポール国立大学(NUS)リー・クアンユー公共政策大学院の「アジア地政学プログラム」は、日本や東南アジアで活躍するビジネスリーダーや官僚などが多数参加する超人気講座。同講座を主宰する田村耕太郎氏の最新刊、『君はなぜ学ばないのか?』(ダイヤモンド社)は、その人気講座のエッセンスと精神を凝縮した一冊。私たちは今、世界が大きく変わろうとする歴史的な大転換点に直面しています。激変の時代を生き抜くために不可欠な「学び」とは何か? 本連載では、この激変の時代を楽しく幸せにたくましく生き抜くためのマインドセットと、具体的な学びの内容について、同書から抜粋・編集してお届けします。

人類に立ちはだかる課題は、
AIがないと解決できない
AI(人工知能)は、我々の敵でもなければ、ライバルでもない。AIは、我々の伴走者である。
我々人間にあって、AIには絶対に持てないもの。
それは「好奇心」だ。
AIは最高のツールであり最高の相棒と言えるが、AIがいかに知性があっても、その関心の矛先をどこに向かわせるかを、AI自身で決めることはできない。
そうなれば、「超知性(人間の知能を超えるレベルの人工知能)」が実現されても、“宝の持ち腐れ”となってしまうだろう。
我々人類が好奇心をフルに発動してAIに指示を出し、その知性が向かう先を示す。
AIは人類の敵であり、AIは我々を抹殺すると危惧する人もいる。
確かに、その可能性もゼロではないが、同時に我々の未来にとってAIは必要不可欠である。
なぜなら、我々人類に立ちはだかる課題は、AIを使いこなさないと解決不能だからである。
その課題とは、エネルギー生産、気候変動対策、大災害の予測と防災・減災、宇宙開発、健康寿命の延伸などである。
そのための物理や化学、医学や創薬、社会格差の解消、地域紛争の解決を促す相互理解の促進、食糧生産、テクノロジーの進化に合わせた教育改革等々は、AIがないと実現できない。
「好奇心」が課題解決を推進する
これからの時代は、我々が好奇心のおもむくまま夢中になって、AIを相棒に、課題の本質を見抜き、それに対する解決策をAIと共に探求することが求められてくる。
人類の総数は、今世紀中に100億人を超えるくらいに増えると見込まれる。
その全員が、各々の切り口でテクノロジーを使い倒してこそ、なんとか未来は明るくなるのだ。
好奇心の大切さについては追って詳しく述べるが、「常に好奇心を持つ」ことを、まずは皆さんにおススメしたい。
(本稿は『君はなぜ学ばないのか?』の一部を抜粋・編集したものです)
シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院 兼任教授、カリフォルニア大学サンディエゴ校グローバル・リーダーシップ・インスティテュート フェロー、一橋ビジネススクール 客員教授(2022~2026年)。元参議院議員。早稲田大学卒業後、慶應義塾大学大学院(MBA)、デューク大学法律大学院、イェール大学大学院修了。オックスフォード大学AMPおよび東京大学EMP修了。山一證券にてM&A仲介業務に従事。米国留学を経て大阪日日新聞社社長。2002年に初当選し、2010年まで参議院議員。第一次安倍内閣で内閣府大臣政務官(経済・財政、金融、再チャレンジ、地方分権)を務めた。
2010年イェール大学フェロー、2011年ハーバード大学リサーチアソシエイト、世界で最も多くのノーベル賞受賞者(29名)を輩出したシンクタンク「ランド研究所」で当時唯一の日本人研究員となる。2012年、日本人政治家で初めてハーバードビジネススクールのケース(事例)の主人公となる。ミルケン・インスティテュート 前アジアフェロー。
2014年より、シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院兼任教授としてビジネスパーソン向け「アジア地政学プログラム」を運営し、25期にわたり600名を超えるビジネスリーダーたちが修了。2022年よりカリフォルニア大学サンディエゴ校においても「アメリカ地政学プログラム」を主宰。
CNBCコメンテーター、世界最大のインド系インターナショナルスクールGIISのアドバイザリー・ボードメンバー。米国、シンガポール、イスラエル、アフリカのベンチャーキャピタルのリミテッド・パートナーを務める。OpenAI、Scale AI、SpaceX、Neuralink等、70社以上の世界のテクノロジースタートアップに投資する個人投資家でもある。シリーズ累計91万部突破のベストセラー『頭に来てもアホとは戦うな!』など著書多数。