「生き方があまりうまくいってなかったのでは」とチクリ

登美子と羽多子とのぶは高知、嵩はパリに取材旅行に行くことになった。その晩、登美子は嵩のマンションに泊まり、嵩と布団を並べて語り合う。
立派に成長した嵩は、ずるく生きるという母の生き方があまりうまくいっていなかったのではないかとちくりと指摘する。
翌日、登美子たちは旅の無事を祈るため神社に立ち寄るが、嵩は時間がなく先に出る。それを見送る登美子。そこに高知でよく鳴いていたアオバトの声がする。かつて、嵩は登美子が旅立つのを見送ったが、今度は登美子が嵩の背中を見送る番だ。
登美子は嵩の背中に向かって神妙に祈る。ここで彼女は何を思っていたのか。
その想像のヒントになるのは、嵩のモデル・やなせたかしの詩「母」である。ここで母に「ずるく生きなさい」と言われたことが書いてある。
戦争から帰ったとき母のひざまくらで眠ったとあり、そこで母が言う一言がなかなか印象的だ。再婚して息子を捨てた母、ずるく生きようとした母、意地っ張りの母が、息子が眠っていると思って語りかける言葉――。
ドラマでは嵩の背中に祈りながら、この詩のような思いを登美子は抱いていたのではないだろうか。
高知から帰ったのぶは近所の写真屋さんに旅の写真の現像と焼き付けを頼みに行く。店主の堀井満(石橋蓮司)は孫が絵本「あんぱんまん」のファンだと、あんぱんまんのセリフを真似する。
またこの場面では平仮名表記。ちなみにやなせたかし表記も「やなせ・たかし」バージョンもあって、ほんとうにややこしい。
「思わぬ場所で応援され 勇気100倍ののぶでした」と語り(林田理沙)。
石橋蓮司は、中園ミホの書いた『花子とアン』で花子の祖父を演じた。
「カメラといっしょで愛情を込めて残されたものは廃れません。繰り返し読まれることでどんどん良さが増すはずだ」とメッセージ性の強いセリフを託された。
石橋蓮司、写真館というと『仮面ライダーディケイド』(09年)で石橋が演じた光写真館の店主を思い出す特撮ファンもいるようだ。