通常、技能実習生たちは母国内の「送り出し機関」(フューチャーリンクもこれに該当する)の募集に応じて現地で研修を受け、彼らと提携する日本国内の技能実習生の取りまとめ組織である「監理団体」に送られる。この監理団体の斡旋のもとで、日本各地の受け入れ先企業において事実上の就業をおこなう。「実習」先の大部分は地方の中小企業だ。
近年、日本は慢性的な経済の停滞や少子高齢化、地方経済の衰退などに加えて、他の先進国と比較しても非効率的な働き方が蔓延している。
技能実習制度はこうした日本の最も病理が深い部分と直接接続している制度と言ってよく、それゆえに調べれば調べるほど悩ましい現実ばかりが見えてくる。
母国での多額の借金を
日本での労働では返せない
たとえば、技能実習生はたいてい出国前に多額の借金をして、現地のブローカーや送り出し機関に50万~150万円ほどの費用を支払って来日している。
一応、日本政府は送り出し機関が徴収する費用に対する上限を設けているのだが、なにぶん海外のことであり、悪質な機関ほど定められたルールに従っていない。
2019年には、年間で8796人の技能実習生が逃亡・失踪している。主な理由は、受け入れ先企業の給料が日本の最低賃金レベルしか得られず、母国での借金を返せないためだ。
しかも、技能実習生は名目上は「実習」のために日本にいるので、受け入れ先企業の変更は容易ではない――。つまり3年以上の実習期間を通じて、職業選択の自由や移動の自由がほとんど認められていない。雇用条件や人間関係が悪い職場を離れる最も手っ取り早い方法は「逃亡」しかないわけである。
人数の母数が多いこともあって、逃亡する技能実習生の半数以上はベトナム人だ。
彼らはフェイスブックのコミュニティに集う、ベトナム語で「bộ đội(兵士)」と呼ばれる人たちである。
ベトナム人技能実習生問題に詳しい、神戸大学大学院国際協力研究科准教授の斉藤善久はこう説明している。
「彼らは不法就労をおこなう目的で外国人技能実習制度を利用したわけではなく、来日後に強い失望や違和感を覚えたことで、逃げている。はじめから不法滞在や不法就労をする気であれば、他にもっと安価に来日する方法はあるんです」