ブラック労働を強いられても
実習生は声を上げられない構造

 日本側の監理団体も問題が多い。悪質な団体ほど、技能実習生と受け入れ先企業とのトラブルが発生した際に、自分たちの顧客である企業の肩を持ちがちだからだ。

 技能実習生が最も恐れているのは、借金を返しきれないうちに監理団体からの「懲罰」を受けて強制帰国させられることであり、ゆえに生殺与奪の権を握っている監理団体には決して逆らえない。

 結果的に、職場での低賃金やセクハラ・パワハラなどの労働問題を告発しづらい構造が形成されている。

 また、技能実習生が送り込まれる企業は、従業員50人未満の会社が全体のおよそ8割、さらに従業員数が10人未満の会社が約半分を占めている。経営基盤が脆弱(ぜいじゃく)だったり、コンプライアンスがいい加減だったりする会社も少なからず存在することが、トラブルの多発に拍車をかけている。

 2016年、ハーがハノイで申し込んだ送り出し機関のフューチャーリンクも、広島県福山市内にあった監理団体のTTK(名称は当時)も、受け入れ先企業のハンムラ社も、外国人技能実習制度の歪みに群がるそんな悪質な事業者たちだった。

 フューチャーリンク幹部のドゥックは「事前の希望とのミスマッチはありません」と話していたが、それが実態とは程遠いことは、この時点ですでに複数の関係者に取材して明らかであった。

※多くの問題点が指摘されていた「外国人技能実習制度」は、2027年までに施行される「育成就労制度」に移行予定。その後3年間の移行期間を経て、2030年に廃止される予定。