10年かけて学校が「成長」する期間は
中・高の6年間の子どもの成長期と重なる

 いまや最難関校の一角を形成する豊島岡も同様で、約30年かけて丁寧な教育を続けることで現在の地位を築きました。こうした成功例を見ると、中堅校に子どもを入れることは将来への投資とも言えるかもしれません。

 10年先、15年先の学校の評価は誰にもわかりません。しかし、中学・高校の6年間は子どもの成長期と重なる大切な時期です。

 ある学校が10年かけて「成長」するとして、6年間がそこに重なれば、子どもの成長にとって大きな意味があるため、学校全体の偏差値が右肩上がりに上昇している、いわば「波に乗っている学校」に入れたいという心理が働くのは当然です。子どもが通う6年間で学校の評価が上がれば、その恩恵を受けることにもなります。

 偏差値の上昇は、渋谷教育学園渋谷(渋渋)や渋谷教育学園幕張(渋幕)のように、共学校でより顕著です。他の中堅校にとっても「自分たちも上位校になれる」という希望を与え、実際に渋渋を追うように、広尾、三田国際、東京農業大学第一、開智日本橋、ドルトン東京などが伸びています。

 一方で、成蹊、成城などの大学付属校は上がりにくい傾向があります。これは、中学・高校がどれだけ努力しても大学自体の評価が安定しているからです。

今の中堅校はどんなところか
佼成、獨協、恵泉、山脇、日本大学第二、芝浦工大附属……

 さて、かつての中堅校が難関校になってしまった現在、中堅校の位置にある学校はどんなところなのでしょうか。佼成、獨協、山脇、芝浦工大付属、明大中野などが注目を集めています。また、成城学園(世田谷区)とは別の新宿区にある男子校の成城や女子校の中村も伸びてきています。エリアを広げれば、開智所沢、神奈川県内では山手学院も面倒見の良さで評判です。

 こうした中堅校は、単に「難関校ではない学校」というだけでなく、独自の教育方針や特色を持っています。中には昔の固定観念とは大きく異なる教育を行っている学校も多く、実際に足を運んでみると、多くの保護者が持つイメージとは違う魅力に気づくことがあります。

 例えば桐蔭学園は、かつては「詰め込み教育の代名詞」とも言われていました。40代前後の卒業生からは「東大合格者は多かったけれど、一学年1200人もいて学校内が予備校のようだった」「勉強の量が多くて大変だった」といった自虐的な声も聞かれます。

 しかし現在の桐蔭学園は教育方針が180度変わり、アクティブ・ラーニングを取り入れた新しい教育を実践しています。このように、過去の固定観念で学校を判断せず、現在の学校の姿を正確に知ることが大切です。