利用者10倍に急増!故人の証券口座をまとめて確認できる「ほふり開示請求」の手順と注意点写真はイメージです Photo:PIXTA

被相続人の相続財産の中に株式や投資信託が含まれていても、相続人はどの証券会社で取引されているか特定できない場合がある。そうした際、証券口座の所在を把握するには証券保管振替機構(ほふり)への開示請求が有効だ。本記事では、被相続人の証券口座の存在を調べる必要性と背景を踏まえ、相続開始後の証券口座確認の方法と留意点を解説する。(税理士・岡野相続税理士法人 代表社員 岡野雄志)

ほふりへの開示請求件数は
過去10年で10倍に急増

 証券保管振替機構(以下、ほふり)という組織をご存じだろうか。ほふりとは、株式や投資信託の振替業務を一元管理する機構である。普段は耳にすることが少ない組織だが、実は相続時に利用される方は多い。

 被相続人の相続財産の中に株式や投資信託が含まれていても、相続人はどの証券会社で取引されているか特定できない場合がある。2009年以降、上場企業の紙による株券はすでに廃止されており、電子化されてほふりに登録されている。そのため、ほふりに対して開示請求を行うことで、証券口座の所在を把握できる可能性があるのだ。

 近年、株式取引を楽しむ個人投資家の増加に伴い、ほふりへの開示請求件数は急増している。2024年には相続開始後に相続人などから行われる「証券口座開設先の開示」請求は、過去10年で10倍に達した。NISA口座の普及やオンライン証券を利用した取引の増加により、相続後に家族が把握できない株式取引や金融資産も増加している。10年前は月平均約100件だった開示請求件数は、現在では月1000件に上っているのだ。