
地方のシャッター商店街で
時代に取り残された遺物
「なんでM銀行だけ残ってるんだろう…」
毎年、夏休みに妻の実家がある東北の街を訪れるたび、私は時代の変化を痛感する。賑わっていた商店街はシャッターが下り、若者は職を求めて大都市へ出ていった。
そんな中で、ただ一つ、M銀行の看板だけが昔と変わらず煌々と輝いている。他のメガバンクが撤退したというのに、なぜM銀行はこの地にとどまっているのか。その看板を見るたびに自問する。
看板を目にし、言葉にできないような誇りと同時に、「時代に取り残された遺物」を見ているのではないか、という冷静な問いも沸き起こる。
この看板は、M銀行が「撤退しそびれた」結果なのだろうか。それとも、単なる採算性では測れない、地方のポテンシャルを見出そうとしているのだろうか。
私が勤務するメガバンクの前身である各旧行は、地域の産業振興を目的とした国策として明治時代に設立されたこともあり、中核都市のほとんどに支店を置いていた。
ただ、産業の移り変わりは130年あまりの間で大きく変わっている。炭鉱で栄えた街はすでにその役目を終えているし、繊維や鉄鋼、軍需産業などもその類だ。
地域の地場産業が都市銀行の支店との付き合いを保持するのは、大都市にある大企業を紹介してもらい、業容を拡大したいという意図があるからだ。
ただし、都市銀行の引き際は早い。少しでも悪い状況になると、融資撤退のスピードはあっという間である。地元に根付いている地銀とは、正反対の考え方である。